3 音階と周波数の関係

弦楽器を考えればわかると思うが、短かく、強く張った弦ほど高い音が出る。 これは、そのような弦の方が速く振動し、その振動が空気を伝わるからである。 つまり、高い音程は速い振動に、低い音程は遅い振動に対応する。

それに対し、音量は、2 節のプログラムにあるように 振幅の大きさ、すなわち式 (1) の $A$ に対応し、 また音色は波の形に対応する。 (1) のような三角関数による音は単純な、純粋な音で、 実際の楽器の音はより複雑な振動波形になっている。

ギターなどの弦楽器を引く人はわかるだろうが、 倍の周波数 (半分の弦の長さ) にすると丁度 1 オクターブ上の音程の音になる。 よって、4 倍の周波数は 2 オクターブ上の音になる。 1 オクターブの中には、半音間隔で、

ド、ド$\sharp$ ($=$$\flat$)、 レ、レ$\sharp$ ($=$$\flat$)、 ミ、 ファ、ファ$\sharp$ ($=$$\flat$)、
ソ、ソ$\sharp$ ($=$$\flat$)、 ラ、ラ$\sharp$ ($=$$\flat$)、 シ、 ド
と、12 個の間隔がある (ミとファ、シとドは半音しか離れていない)。 各音程の周波数は、 1 オクターブ (12 半音上) 上がる毎に周波数が倍になるように、 音階に対して等比数列的に増えていく2。 例えば、ド、ド$\sharp$、レ、...の音の周波数を $a_0$, $a_1$, $a_2$,...とし、この等比数列の公比を $r$ とすると、
\begin{displaymath}
a_{12}=a_0r^{12}=2a_0
\end{displaymath}

であるから、$r^{12}=2$ より $r=\sqrt[12]{2}$, よって、
\begin{displaymath}
a_n=a_0r^n = a_0 2^{n/12}\end{displaymath} (2)

となる。

通常音階の基準音として使用されるラの音 (時報の最初の 3 つの音の音程) は、440Hz 付近の音が使われているようである。よって、

\begin{displaymath}
a_9 = 440 = a_0 2^{9/12} = a_0 2^{3/4}
\end{displaymath}

より、
\begin{displaymath}
a_0 = 440\cdot 2^{-3/4} = 261.63\mathrm{Hz}
\end{displaymath}

となる。これに $2^{1/12} = 1.05946\cdots$ を順にかけることで以下が得られる。
$a_{0}=261.63$Hz (ド), $a_{1}=277.18$Hz (ド$\sharp$), $a_{2}=293.66$Hz (レ),
$a_{3}=311.13$Hz (レ$\sharp$), $a_{4}=329.63$Hz (ミ), $a_{5}=349.23$Hz (ファ$\sharp$),
$a_{6}=369.99$Hz (ファ), $a_{7}=392.00$Hz (ソ), $a_{8}=415.30$Hz (ソ$\sharp$),
$a_{9}=440.00$Hz (ラ), $a_{10}=466.16$Hz (ラ$\sharp$), $a_{11}=493.88$Hz (シ),
$a_{12}=523.25$Hz (ド)    

このように、音階を一定に上げる (下げる) には、 周波数を等比数列的に上げる (下げる) 必要があることに注意する。

竹野茂治@新潟工科大学
2007年8月7日