3 座標軸をとりかえた成分計算による証明

次に、[1], [4] で行われている、 ほぼ成分計算ではあるが、座標軸のとりかえによる やや易しい計算による証明を紹介する。


証明 2

$\mbox{\boldmath$B$}=\mbox{\boldmath$0$}$ の場合には (1) の両辺がともに $\mbox{\boldmath$0$}$ となって成立するから、 $\mbox{\boldmath$B$}\neq\mbox{\boldmath$0$}$ の場合を考える。

今、 $\mbox{\boldmath$P$}=\mbox{\boldmath$B$}/\vert\mbox{\boldmath$B$}\vert$ ( $\mbox{\boldmath$B$}$ 方向の単位ベクトル) とし、 $\mbox{\boldmath$B$}$, $\mbox{\boldmath$C$}$ が含まれる平面上で $\mbox{\boldmath$B$}$ に垂直な単位ベクトルを $\mbox{\boldmath$Q$}$ とする ( $\mbox{\boldmath$B$}$, $\mbox{\boldmath$C$}$ が平行な場合は、 $\mbox{\boldmath$B$}$ に垂直な任意の単位ベクトルとする) と、

\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$B$}=a\mbox{\boldmath$P$},\hspace{1zw}\mbox{\boldmath$C$}=m\mbox{\boldmath$P$}+n\mbox{\boldmath$Q$}
\end{displaymath}

のように表すことができる。 さらに、 $\mbox{\boldmath$R$}=\mbox{\boldmath$P$}\times\mbox{\boldmath$Q$}$ とすると、 $\mbox{\boldmath$P$}$, $\mbox{\boldmath$Q$}$, $\mbox{\boldmath$R$}$ は右手系の互いに直交する単位ベクトルとなる。 これを使って
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$A$}=s\mbox{\boldmath$P$}+t\mbox{\boldmath$Q$}+u\mbox{\boldmath$R$}
\end{displaymath}

と表すと、
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$B$}\times\mbox{\boldmath$C$}
= a\mbox{\bo...
...{\boldmath$P$}+n\mbox{\boldmath$Q$})
= an\mbox{\boldmath$R$}
\end{displaymath}

となるので、(1) の左辺は
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$A$}\times(\mbox{\boldmath$B$}\times\mbox{\b...
...ldmath$R$})
= -ans\mbox{\boldmath$Q$}+ant\mbox{\boldmath$P$}
\end{displaymath} (4)

となる。一方、
\begin{eqnarray*}\mbox{\boldmath$A$}\cdot\mbox{\boldmath$B$}
& = &
(s\mbox{\b...
...)\cdot(m\mbox{\boldmath$P$}+n\mbox{\boldmath$Q$})
=
ms + nt
\end{eqnarray*}


となるので、(1) の右辺は、
\begin{displaymath}
(\mbox{\boldmath$A$}\cdot\mbox{\boldmath$C$})\mbox{\boldmat...
...ldmath$Q$})
=
ant\mbox{\boldmath$P$}-ans\mbox{\boldmath$Q$}
\end{displaymath}

となり (4) に等しくなるので、 (1) の両辺が一致することになる。


この証明は、2 節の成分計算に比べて多少計算は楽であり、 また多少幾何学的な考察が含まれてはいるが、 やはり (1) の両辺の確認をしているだけである。 (4) の右辺から (1) の右辺を導くことは 以下のようにすればできなくはない。

\begin{eqnarray*}-ans\mbox{\boldmath$Q$}+ant\mbox{\boldmath$P$}
&=&
-as(\mbox{...
...-(\mbox{\boldmath$A$}\cdot\mbox{\boldmath$B$})\mbox{\boldmath$C$}\end{eqnarray*}


しかし、最後の等号の部分は (1) の右辺を知らなければ このようになると見抜くことは難しく、 なぜ (1) の右辺の形が導かれるのかという説明には あまりなっていないように思う。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年5月21日