7 偏角積分

あとは、(13) より、
  $\displaystyle
I
=\int_c^d\mu(t)\vert\mbox{\boldmath$r$}'(t)\vert dt
=\int_c^d\frac{x'y''-x''y'}{(x')^2+(y')^2} dt$ (14)
の積分を計算すればよい。 この積分の不定積分を $J$ と書くことにする。

仮定 (4) より、$(x')^2+(y')^2$ は常に正なので、 $x'(t)\neq 0$ である $t$ の範囲 $U$ ($[c,d]$ の開部分集合) と、 $y'(t)\neq 0$ である $t$ の範囲 $V$ ($[c,d]$ の開部分集合) は $U\cup V=[c,d]$ となるが、 $t\in U$ の範囲で (14) を積分すると、

$\displaystyle J$ $\textstyle =$ $\displaystyle \int\frac{x'y''-x''y'}{(x')^2+(y')^2} dt
 =\
\int\frac{x'y''-x''y'}{(x')^2} \frac{1}{1+(y'/x')^2} dt$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \int\left(\frac{y'}{x'}\right)' \frac{1}{1+(y'/x')^2} dt
 =\
\arctan\left(\frac{y'}{x'}\right) + C$ (15)
となる。同様に、$t\in V$ の範囲で積分すると、
$\displaystyle J$ $\textstyle =$ $\displaystyle \int\frac{x'y''-x''y'}{(y')^2} \frac{1}{1+(x'/y')^2} dt
 =\
-\int\left(\frac{x'}{y'}\right)' \frac{1}{1+(x'/y')^2} dt$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \mathop{\rm arccot}\left(\frac{x'}{y'}\right) + C$ (16)
となる。ここで、 $\theta=\mathop{\rm arccot}x$ は値域は $0<\theta<\pi$、 定義域は実数全体の減少関数で、 $\mathop{\rm arccot}(-\infty)=\pi$, $\mathop{\rm arccot}(\infty)=0$, $\mathop{\rm arccot}0=\pi/2$ となる。 $\mathop{\rm arccot}x = \pi/2 - \arctan x$ となることも容易にわかる。
図 10: $\mathop{\rm arccot}x$, $\arctan x$
\includegraphics[height=0.2\textheight ]{crv2-acot.eps}

$x\neq 0$ に対し、 $\mathop{\rm arccot}(1/x)=\alpha$ とすると、 $\cot\alpha=1/x$ より $\tan\alpha=x$ となるが、 $x<0$ では $\pi/2<\alpha<\pi$, $x>0$ では $0<\alpha<\pi/2$ なので、 よって

  $\displaystyle
\mathop{\rm arccot}\frac{1}{x} = \arctan x+\left\{\begin{array}{ll}
0 & (x>0)\\
\pi & (x<0)
\end{array}\right.$ (17)
となる。ただし、 $\arctan(y'(t)/x'(t))$ $\mathop{\rm arccot}(x'(t)/y'(t))$$I$ の滑らかな原始関数にはならない。

今、$\phi(t)$ をベクトル $\mbox{\boldmath$r$}'(t)$ の偏角とする:

  $\displaystyle
x'(t) = R(t)\cos\phi(t),
\hspace{1zw}y'(t) = R(t)\sin\phi(t)
\hspace{1zw}(R(t)=\vert\mbox{\boldmath$r$}'(t)\vert>0)$ (18)
ただし、$\phi(t)$$[0,2\pi)$ の範囲には制限せず、 $c\leq t\leq d$ で滑らかに変化するように取り、 よって $2\pi$ を越えたり負になったりしてもよいとする。

$C_1$ に交差はなく、また $t$ に伴なって $\mbox{\boldmath$r$}'(t)$$C_1$ を 左回りに進むので、終点では $\mbox{\boldmath$r$}'(t)$ は始点より 1 回転反時計回りに回っていることになり (図 11)、 よって始点と終点の偏角の差は

  $\displaystyle
\phi(d) = \phi(c)+2\pi$ (19)
となる。
図 11: $\mbox{\boldmath $r'$}$ の回転
\includegraphics[height=0.3\textheight]{crv2-rotate.eps}

(18) より $U$ では $\tan\phi(t)=y'(t)/x'(t)$, $V$ では $\cot\phi(t)=x'(t)/y'(t)$ なので、 $t\in U$ $-\pi/2+n\pi <\phi(t)<\pi/2+n\pi$ の範囲では

$\displaystyle \phi(t)=\arctan\left(\frac{y'(t)}{x'(t)}\right)+n\pi
$
となり、$t\in V$ $n\pi < \phi(t)< (n+1)\pi$ の範囲では
$\displaystyle \phi(t)=\mathop{\rm arccot}\left(\frac{x'(t)}{y'(t)}\right)+n\pi
$
となる。よって、(15), (16) より、 すべての $t$ ( $\in U\cup V=[c,d]$) に対して
  $\displaystyle
\phi'(t) = \frac{x'y''-x''y'}{(x')^2+(y')^2} = \mu(t)\vert\mbox{\boldmath$r$}'(t)\vert$ (20)
となり、よってこの偏角 $\phi(t)$ が (14) の $I$ の 滑らかな原始関数であることがわかる。 よって、(19) より
$\displaystyle I = \left[\phi(t)\right]_c^d = \phi(d)-\phi(c) = 2\pi
$
$I$ が求まり、結局 (13) の $\Delta\ell$$2\pi a$ となること、 すなわち一般の閉曲線の場合でも $a$ だけ離れた閉曲線との 弧長の差は $2\pi a$ となることがわかった。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-05-18