2.3 多変数関数による確率分布

以後、 $(x_1,\ldots,x_n)=\vec{x}$ のようなベクトル表記も用いることにする。

$n$ 次元離散分布 $(\Omega,r,\vec{x})$ と、$\Omega$ 上の実数値関数 $\phi:\Omega\rightarrow\mbox{\boldmath R}$ に対して、$\phi$ の像を

  $\displaystyle
\Lambda = \phi(\Omega) = \{\phi(\vec{x})\vert\ \vec{x}\in\Omega\}$ (8)
とすると $\Lambda$ は有限集合か可算集合で、$y\in\Lambda$ に対して
  $\displaystyle
q(y) = \sum_{\{\vec{x}\vert\ \phi(\vec{x})=y\}} r(\vec{x})$ (9)
によって $\phi(\vec{x})=y$ となる確率を与える関数を定めることができる。 ここで、和は $\phi(\vec{x})=y$ となるすべての $\vec{x}$ に対する $r(\vec{x})$ の和を意味する。 これにより、$q(y)$ を確率関数とする確率変数 $y=\phi(\vec{x})$、 すなわち確率分布 $(\Lambda,q,y)$ が定まる。

このようなやり方で、例えば $z=xy$ $y=x_1+x_2+\cdots+x_n$ のような 複数の確率変数の式で表される確率変数が作られることになる。

さて、離散確率分布 $(\Omega,p,x)$ に対する平均 $E[x]$ は、

  $\displaystyle
E[x] = \sum_{x\in\Omega} xp(x)$ (10)
と定義される。多変数関数による確率変数 $y=\phi(\vec{x})$ の、 この平均 $E[y]$ の計算について考える。 (9) より、
$\displaystyle E[y]
= \sum_{y\in\Lambda} yq(y)
= \sum_{y\in\Lambda} y\sum_{\{\v...
...y\}} \phi(\vec{x})r(\vec{x})
= \sum_{\vec{x}\in\Omega} \phi(\vec{x})r(\vec{x})
$
となり、結局 $E[y]$ の計算を、$\Lambda$ の代わりに $\Omega$ 上の値で
  $\displaystyle
E[y] = \sum_{\vec{x}\in\Omega} \phi(\vec{x})r(\vec{x})$ (11)
のように計算できることになる。 この右辺を $E[\phi(\vec{x})]$ のように書く。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-07-28