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6 スケール変換に対する不変性

データの指標としては、スケール変換に対する不変性も重要な性質である。 $r,\hat{r},a,\hat{a}$ 等について、これも調べてみる。

$x'_j=Ax_j$, $y'_j=By_j$ ( $j=1,2,\ldots,n$, $A,B$ は正の定数) とすると、

\begin{displaymath}
\overline{x'}\,=A\overline{x}\,,\hspace{1zw}\overline{y'}\,=...
...},\hspace{1zw}S_{x'y'}=ABS_{xy},\hspace{1zw}S_{y'y'}=B^2S_{yy}
\end{displaymath}

となることが容易に分かる。よって、 $r(x',y')= (x',y'$ に対する $r$ の値) 等とすると、

\begin{displaymath}
r(x',y')
= \frac{S_{x'y'}}{\sqrt{S_{x'x'}S_{y'y'}}}
= \frac...
..._{xx}B^2S_{yy}}}
= \frac{S_{xy}}{\sqrt{S_{xx}S_{yy}}}
= r(x,y)
\end{displaymath}

となり、通常の相関係数はこのスケール変換に対しては不変であることが分かる。

一方、新たに作った $\hat{r}$ の方は、

\begin{eqnarray*}\hat{r}(x',y')
& = & \frac{\sqrt{(S_{x'x'}-S_{y'y'})^2+4S_{x'y...
...S_{xx}+\delta^2S_{yy}}\hspace{1zw}\left(\delta=\frac{B}{A}\right)\end{eqnarray*}

となり、$\delta$ が 1 以外のときは明らかに $\hat{r}(x,y)$ とは等しくならない。 つまり $\hat{r}$ はこのスケール変換に関しては不変ではないことが分かる。

同様に回帰直線についても同じスケール変換を考えてみると、 通常の回帰直線は $(x',y')$ については

\begin{displaymath}
y'-\overline{y'}\,=a(x',y')(x'-\overline{x'}\,) = \frac{S_{x'y'}}{S_{x'x'}}(x'-\overline{x'}\,)
\end{displaymath}

であるが、これは

\begin{displaymath}
B(y-\overline{y}\,)=\frac{ABS_{xy}}{A^2S_{xx}}A(x-\overline{x}\,)
\end{displaymath}

となるので、$(x,y)$ 座標系では

\begin{displaymath}
y-\overline{y}\,=\frac{S_{xy}}{S_{xx}}(x-\overline{x}\,) = a(x,y)(x-\overline{x}\,)
\end{displaymath}

となり $(x,y)$ での回帰直線に一致する。つまり、一見

\begin{displaymath}
a(x',y')=\frac{S_{x'y'}}{S_{x'x'}}=\frac{B}{A}a(x,y)
\end{displaymath}

となり、スケール変換で変わってしまうようにも見えるが、 実際は本質的にスケール変換不変であることが分かる。

ところが、新たに考えた $\hat{a}$ を用いた回帰直線の方は、

\begin{eqnarray*}\hat{a}(x',y')
& = & \frac{S_{y'y'}-S_{x'x'}+\sqrt{(S_{x'x'}-S...
...qrt{(S_{xx}-\delta^2S_{yy})^2+4\delta^2S_{xy}^2}}{2\delta S_{xy}}\end{eqnarray*}

となり、これもやはり $\delta\hat{a}(x,y)=B\hat{a}(x,y)/A$ には一致せず、 本質的にこのスケール変換で変わってしまうことになる。


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Shigeharu TAKENO
2004年 10月 18日