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4 回転不変性について

これまでにあげた疑問を考えていくが、 まずは問題 2 としてあげた 相関係数や回帰直線の回転不変性について考える。

データ $(x_j,y_j)$ を、原点の周りに $\theta$ 回転したデータを $(x'_j,y'_j)$ とする。すなわち

\begin{displaymath}
\left[\begin{array}{c}x'_j\\ y'_j\end{array}\right] = A(\the...
...\theta &-\sin\theta\\ \sin\theta &\cos\theta\end{array}\right]
\end{displaymath}

とすれば、

\begin{displaymath}
\left[\begin{array}{c}\overline{x'}\,\\ \overline{y'}\,\end{...
...y}{c}x_j-\overline{x}\,\\ y_j-\overline{y}\,\end{array}\right]
\end{displaymath}

なので、

\begin{eqnarray*}S_{x'x'}
& = & \sum_j (x'_j-\overline{x'}\,)^2
= \sum_j \{(...
...{xx}\sin^2\theta+2S_{xy}\cos\theta\sin\theta
+S_{yy}\cos^2\theta\end{eqnarray*}

となる。この式から、$r$$\theta$ に関して不変でないことはすぐに分かる。

しかし、回転不変な式もいくつか容易に見つかる。例えば

\begin{displaymath}
S_{x'x'}+S_{y'y'} = S_{xx}+S_{yy}\end{displaymath} (2)

であるし、また、

\begin{eqnarray*}S_{x'x'}-S_{y'y'}
& = & (S_{xx}-S_{yy})(\cos^2\theta-\sin^2\t...
...\
2S_{x'y'} & = & (S_{xx}-S_{yy})\sin2\theta+2S_{xy}\cos2\theta\end{eqnarray*}

より、
\begin{displaymath}
(S_{x'x'}-S_{y'y'})^2+4S_{x'y'}^2 = (S_{xx}-S_{yy})^2+4S_{xy}^2\end{displaymath} (3)

のような不変量も得られるし、これら 2 つを組み合わせて ( % latex2html id marker 2117
$((\ref{eq:rotationinv:2})-(\ref{eq:rotationinv:1})^2)/4$)、
\begin{displaymath}
S_{x'y'}^2-S_{x'x'}S_{y'y'} = S_{xy}^2-S_{xx}S_{yy}\end{displaymath} (4)

のような不変量も得られる。

また、この回転されたデータに対する回帰直線は

\begin{displaymath}
y'-\overline{y'}\,=a'(x'-\overline{x'}\,) = \frac{S_{x'y'}}{S_{x'x'}}(x'-\overline{x'}\,)
\end{displaymath}

であり、これは

\begin{displaymath}
\left[\begin{array}{c}x'-\overline{x'}\,\\ y'-\overline{y'}\...
...array}\right]
=t\left[\begin{array}{c}1\\ a'\end{array}\right]
\end{displaymath}

とパラメータ表示される。よって、この両辺に $A(-\theta)$ をかけて この直線を原点の周りに $(-\theta)$ 回転すると

\begin{eqnarray*}&& A(-\theta)\left[\begin{array}{c}x'-\overline{x'}\,\\ y'-\ove...
...a\\
-S_{x'x'}\sin\theta+S_{x'y'}\cos\theta\end{array}\right]\\ \end{eqnarray*}

となる。ここで、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{S_{x'x'}\cos\theta+S_{x'y'}\sin\theta}\\
& = & (S_{x...
...sin\theta\}\cos\theta\\
& = & S_{xy}\cos\theta-S_{yy}\sin\theta\end{eqnarray*}

となるので、この直線の傾き $a''(\theta)$

\begin{displaymath}
a''(\theta) = \frac{-S_{x'x'}\sin\theta+S_{x'y'}\cos\theta}%...
...os\theta-S_{yy}\sin\theta}{S_{xx}\cos\theta -S_{xy}\sin\theta}
\end{displaymath}

となる。 これは $\theta\neq 0$ であればもちろん通常の回帰直線の傾き $a=S_{xy}/S_{xx}$ とは一致しない。 つまり、回帰直線も回転不変性を持たないことがわかる。

なお、この $a''(\theta)$ の、 $\theta=90^\circ$ のときの値は、

$(x_j,y_j)$$90^\circ$ 回したデータに対する回帰直線を $-90^\circ$ 回した直線の傾き
を意味するが、$y$ 軸に関して折り返して考えれば容易に分かるが、 その傾きは、3 節でも言及した、
$(y_j,x_j)$ に対する回帰直線を、$y=x$ に関して対称に折り返したものの傾き
に等しい。つまり、そのような直線を表す式は

\begin{displaymath}
y-\overline{y}\,=\tilde{a}(x-\overline{x}\,) = \frac{S_{yy}}{S_{xy}}(x-\overline{x}\,)
\end{displaymath}

であることがわかる。この直線も元の回帰直線とは一致しない。


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Shigeharu TAKENO
2004年 10月 18日