3 対数グラフの利便性

ここでは、対数グラフがどういう点に優れていて、 どういう場面で使われるのかを説明する。

実験のデータ等をグラフに取っていくと、それに何らかの規則があれば、 多少誤差が含まれていてもその様子がぼんやり見えてくるが、 その関係が曲線である場合、それがどんな式にあてはまるのかを 見い出すことは容易ではない (図 5)。

例えばそれが $y=Ax^2$ のように $x^2$ に 比例する関係なのか、$y=Bx^3$ のように $x^3$ に比例する関係なのかを 目で見極めることは非常に難しいし、 さらにそのデータに誤差が含まれていることを考えると、 それを行なうのは現実的ではない。

図 5: 曲線的な関係
\includegraphics[width=0.4\textwidth,clip]{logcurve.eps}

しかし、両対数グラフでは、実際の値 $(x,y)$ と そのグラフ上の見かけの位置 $(X,Y)$ には、

\begin{displaymath}
X=\log_{10}x,\hspace{1zw}Y=\log_{10}y
\end{displaymath}

の関係があるので、例えば $y=Ax^2$ という関係の場合、 両対数グラフでの見かけの位置は
\begin{eqnarray*}Y & = & \log_{10}y
=
\log_{10}Ax^2
=
\log_{10}A + \log_{10}x^2
=
\log_{10}A + 2\log_{10}x
\\ &=&
2X + \log_{10}A\end{eqnarray*}


となり、よって $y=Ax^2$ の両対数グラフでの見かけのグラフは 「傾きが 2 の直線」になる。

同様に、$y=Bx^3$ も両対数グラフでは見かけは傾きが 3 の直線、 $y=a/x$ という反比例関係も両対数グラフでは傾きが $(-1)$ の直線になる (図 6)。

図 6: 線形軸グラフと両対数グラフ
\includegraphics[width=0.8\textwidth,clip]{loggraph1.eps}

結局 $y=Ax^\alpha$ の形の関係は、両対数グラフではすべて直線になり、 その指数部分 ($\alpha$) はその直線の傾きになるので、 人間の目でもおおまかに知ることは可能になる (さらに統計的にそれを知るための「相関係数」や「回帰直線」 という道具もある)。

また、自然現象、工学現象では、$y=A\times B^x$ のような指数関数の関係が 現れることも多いが、 この場合は、$y$ 軸が対数軸である「片対数グラフ」で見ると その見かけの位置 $(x,Y)$ は、

\begin{displaymath}
Y = \log_{10}y
= \log_{10}A\times B^x
= \log_{10}A + \log_{10}B^x
= \log_{10}A + x\log_{10}B
\end{displaymath}

となるので、片対数グラフでは傾き $\log_{10}B$ の直線になることになる。

このように、対数グラフは、 工学や多くの自然現象で現れやすい $y=Ax^\alpha$$y=A\times B^x$ のような関係や、それに基づく誤差を含んだデータの関係を見極めるのに便利である。

竹野茂治@新潟工科大学
2014年8月5日