工学分野では、これが用いられる代表的な例の一つに回帰直線の導出があるが、 工学向けの本ではそこでは停留点を求める計算しか紹介せず、 それが極小であることも、最小であることも示していないものが 多いように感じる。
確かに回帰直線の場合は、その 2 変数関数は下に凸な二次関数になるので 停留点がそのまま最小値となるし、 現象から考えても停留点がそのまま最小を与えることが予期されるのであろうが、 本来はその点が極小を与えること、そして最小になることをちゃんと示す必要が あると思う。
しかし考えてみると、例えば微積分の教科書でも停留点、 すなわち極の候補の点が極であるかどうかの判別法は説明するが、 実際にそれが最小であるかどうか、という大域的な性質については あまり書いてないように思う。 そこでふと思ったのであるが、次のことは言えるのであろうか。
問題 1
すべての実数 , について定義されている関数 が 十分滑らか (例えば 級) であり、 その停留点が一つしかなく、 そこで が極大 (極小) となる場合、 その点は最大値 (最小値) を与えるか
もしこれが成り立つならば、「停留点が一つしかない」という 特別な場合であるが、停留点と局所的な凸性の確認のみで 大域的な最大、最小を求めることができることになり、 それなりに十分有益な命題となるはずなので、 本稿ではこれについて考えてみることにする。
竹野茂治@新潟工科大学