2 方向微分係数

$0\leq\theta <2\pi$ に対して (実際は後で述べるように $0\leq\theta <\pi$ でよい)、$t$ の関数 $g_\theta(t)$ を、
\begin{displaymath}
g_\theta(t) = f(a+t\cos\theta, b+t\sin\theta)\end{displaymath} (3)

と定める。点 $P(a+t\cos\theta, b+t\sin\theta)$ は、 点 $(a,b)$ から $\theta$ 方向 (動径ベクトル $(\cos\theta,\sin\theta)$ の方向) に伸びる直線 $\ell _\theta $ 上を、$(a,b)$ から距離 $t$ だけ進んだ点 (図 1) であり、 よって (3) は、 $f(x,y)$$\ell _\theta $ 上の値だけを見た 1 変数関数、ということになる。
図 1: $\ell _\theta $$P$
\includegraphics[width=0.4\textwidth]{fig1.eps}

この $g_\theta(t)$ の微分係数を、$f(x,y)$$\theta$ 方向への 方向微分係数 と呼ぶ。

合成関数の微分 ([1] 定理 34.1) により、

\begin{displaymath}
g_\theta'(t)
= \frac{\partial f}{\partial x}\,\frac{dx}{d...
... f}{\partial y}\,\frac{dy}{dt}
= f_x\cos\theta + f_y\sin\theta\end{displaymath} (4)

となるから、$t=0$ とすると $P$$(a,b)$ となり、 仮定 (1) より、
\begin{displaymath}
g'_\theta(0)
= f_x(a,b)\cos\theta + f_y(a,b)\sin\theta
= 0
\end{displaymath}

となる。

(4) をさらに微分すると、

\begin{eqnarray*}g_\theta''(t)
&=&
(f_x)'\cos\theta + (f_y)'\sin\theta
\\ &=&...
...eta)\cos\theta
+(f_{yx}\cos\theta + f_{yy}\sin\theta)\sin\theta\end{eqnarray*}


となるので、偏微分の順序交換の定理 ([1] 定理 33.1)、 および仮定 (2) より、
$\displaystyle g_\theta''(0)$ $\textstyle =$ $\displaystyle f_{xx}(a,b)\cos^2\theta + 2f_{xy}(a,b)\sin\theta\cos\theta
+ f_{yy}(a,b)\sin^2\theta$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle A\cos^2\theta + 2B\sin\theta\cos\theta + C\sin^2\theta$ (5)

となることがわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2014年11月14日