3 分母が 2 次の有理関数の積分

まずは、分母が 2 次の有理関数の積分
\begin{displaymath}
I_1 = \int \frac{bx+c}{x^2+a^2} dx\end{displaymath} (11)

を考える。ここで、$a$, $b$, $c$ は実数の定数で、$a>0$ とする。

通常これは、

\begin{displaymath}
I_1 = \int\frac{bx}{x^2+a^2} dx + \int\frac{c}{x^2+a^2} dx
\end{displaymath}

と分けて考え、前者は $x^2+a^2=u$、後者は $x=at$ と置換し、
$\displaystyle I_1$ $\textstyle =$ $\displaystyle \int\frac{b}{u} \frac{du}{2} + \int\frac{c}{a^2} \frac{adt}{t^2+1}
=
\frac{b}{2}\log\vert u\vert+\frac{c}{a}\arctan t+C$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{b}{2}\log(x^2+a^2)+\frac{c}{a}\arctan\frac{x}{a}+C$ (12)

となるものである。 本節では、これを複素数の範囲で部分分数分解して考える。

\begin{displaymath}
\frac{bx+c}{x^2+a^2} = \frac{bx+c}{(x+ai)(x-ai)}
= \frac{A}{x+ai}+\frac{B}{x-ai}
\end{displaymath}

と置くと、
\begin{displaymath}
bx+c = A(x-ai)+B(x+ai)
\end{displaymath}

となるので、$x=ai$, $x=-ai$ を代入することで $A$, $B$
\begin{displaymath}
B = \frac{abi+c}{2ai} = \frac{b}{2}-\frac{ci}{2a},
\hspace{0.5zw}
A = \frac{-abi+c}{-2ai} = \frac{b}{2}+\frac{ci}{2a}
\end{displaymath}

となり、よって
\begin{displaymath}
\frac{bx+c}{x^2+a^2}
= \left(\frac{b}{2}+\frac{ci}{2a}\righ...
...}{x+ai}
+ \left(\frac{b}{2}-\frac{ci}{2a}\right)\frac{1}{x-ai}
\end{displaymath}

と分解される。

$x+ai$, $x-ai$ は、$x$ が実数を動いても実軸 ($x$ 軸) とは交わらないので、 (9) より、

\begin{eqnarray*}\int\frac{dx}{x+ai}
&=&
\mathop{\rm Log}(x+ai) + C_1
=
\l...
...}(x-ai) + C_2
=
\log\vert x-ai\vert+i\mathop{\rm Arg}(x-ai)+C_2\end{eqnarray*}


となる。 ここで、(7) より、
\begin{eqnarray*}\mathop{\rm Arg}(x+ai)
&=& -\arctan\frac{x}{a}+\frac{\pi}{2},...
...tan\frac{x}{-a}-\frac{\pi}{2}
= \arctan\frac{x}{a}-\frac{\pi}{2}\end{eqnarray*}


なので、
\begin{eqnarray*}I_1
&=&
\left(\frac{b}{2}+\frac{ci}{2a}\right)\mathop{\rm Lo...
...\log(x^2+a^2)+\frac{c}{a}\arctan\frac{x}{a}
-\frac{c\pi}{2a}+C_3\end{eqnarray*}


となり、確かに (12) と同じものが得られる。

しかしどちらが易しいかといえば、多分前者の方であり、 複素数を用いて分母を 1 次式の積にまで落として部分分数分解をしても、 その後の処理があまり易しくないことがわかる。 特に、 $\mathop{\rm Arg}$ の表現については、 ここでは (7) を用いたが、 (6) の方で考えてしまうとなかなか (12) にはたどりつけない。

竹野茂治@新潟工科大学
2016年12月22日