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5 具体例の計算

ここでは、[2] で計算した例の偶数次の部分
\begin{displaymath}
h(x)=\frac{-6x^4-x^2-7}{(x^2+1)^3}\end{displaymath} (13)

を利用し、命題 1 を用いて複素数の範囲で分解し、 積分を行うとにする。今の場合、$m$ が奇数なので、

\begin{displaymath}
\frac{-6x^4-x^2-7}{(x^2+1)^3}
= \frac{g(x)}{(x+i)^3} + \frac{\bar{g}(x)}{(x-i)^3}
\end{displaymath}

と分けると、高々 2 次式である $g(x)$ は命題 1 により

\begin{displaymath}
g(x)=iax^2+bx+ic\hspace{1zw}(\mbox{$a,b,c$\ は実数定数})
\end{displaymath}

と書けることになる。

\begin{displaymath}
(x+i)^3 = x^3+3x^2i+3xi^2+i^3 = x^3+3x^2i-3x-i
= (x^3-3x)+i(3x^2-1)
\end{displaymath}

であるから、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{-6x^4-x^2-7
=
g(x)(x-i)^3+\bar{g}(x)(x+i)^3 }
\\ &...
...)\}\{(x^3-3x)+i(3x^2-1)\}
\\ &=&
2bx^2(x^2-3)+2(ax^2+c)(3x^2-1)\end{eqnarray*}

となる。$x^2=y$ と置けば

\begin{displaymath}
-6y^2-y-7 =2by(y-3)+2(ay+c)(3y-1)
\end{displaymath}

となる。ここから係数比較、あるいは $y=0,3,1/3$ 等を代入すれば、

\begin{displaymath}
a=-\frac{5}{2},\ b=\frac{9}{2}, \ c=-\frac{7}{2}
\end{displaymath}

となることがわかる。よって、
\begin{displaymath}
\frac{-6x^4-x^2-7}{(x^2+1)^3}
= \frac{-5ix^2+9x+7i}{2(x+i)^3} + \frac{5ix^2+9x-7i}{2(x-i)^3}\end{displaymath} (14)

となる。この右辺の最初の式で $x+i=t$ と置くと、

\begin{eqnarray*}\frac{-5ix^2+9x+7i}{2(x+i)^3}
&=&
\frac{-5i(t-i)^2+9(t-i)+7i}...
...\\ &=&
-\frac{5i}{2(x+i)}-\frac{1}{2(x+i)^2}+\frac{3i}{2(x+i)^3}\end{eqnarray*}

と分けられることがわかる。(14) の右辺の 2 つ目の項は この式の共役複素数であるから、

\begin{displaymath}
\frac{5ix^2+9x-7i}{2(x-i)^3}
=\frac{5i}{2(x-i)}-\frac{1}{2(x-i)^2}-\frac{3i}{2(x-i)^3}
\end{displaymath}

となる。

分母が一次式の場合は、積分を考えるのは少し厄介なので (複素対数関数を考えないといけない)、 それは共役なものと通分してまとめると、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\frac{-6x^4-x^2-7}{(x^2+1)^3}}
\\ &=&
-\frac{5i}{2(x...
...)^2}-\frac{1}{2(x+i)^2}
-\frac{3i}{2(x-i)^3}+\frac{3i}{2(x+i)^3}\end{eqnarray*}

となる。この式を積分すると、$a$ が複素数であっても $m\geq 2$ のときは
\begin{displaymath}
\int\frac{dx}{(x-a)^m} = \int (x-a)^{-m} dx
= \frac{1}{1-m}(x-a)^{1-m} + C
=-\frac{1}{m-1}\frac{1}{(x-a)^{m-1}} + C\end{displaymath} (15)

が成り立つ (証明は A 節参照) ので、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\int\frac{-6x^4-x^2-7}{(x^2+1)^3}dx}
\\ &=&
-5\tan^{...
... \\ &=&
-5\tan^{-1}x
+\frac{x}{x^2+1}
-\frac{3x}{(x^2+1)^2}+C\end{eqnarray*}

となる。


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竹野茂治@新潟工科大学
2006年6月2日