3 h からの解法

まずは $h=y''+y'+y$ に対する (2) から考えてみる。

この (2) は、 $h$ が 1 回微分して元に戻る関数であることを意味するので、 [1] により、

  $\displaystyle
h = y''+y'+y = C_1e^x$ (4)
となる。

次に、 $y=p(x)e^{\alpha x}$ とおいて、(4) に代入すると、

\begin{eqnarray*}y'
&=&
p'e^{\alpha x} + p\alpha e^{\alpha x} = (p'+\alpha p...
... e^{\alpha x}
\ =\
(p''+ 2\alpha p' + \alpha^2 p)e^{\alpha x}\end{eqnarray*}
より、
$\displaystyle y''+y'+y = \{p'' + (2\alpha + 1)p' + (\alpha^2+\alpha+1)p\}e^{\alpha x}
= C_1e^x
$
となるので、$\alpha = -1/2$ ととると $p'$ の項が消えて、
  $\displaystyle
p''+\frac{3}{4} p = C_1e^{3x/2}$ (5)
となる。 この方程式を満たす $p$ を求めるために、[1] の 6 節と 同様の変形を行う。

定数 $\beta$ に対して、

$\displaystyle \left\{\left(\frac{p}{\cos\beta x}\right)'\cos^2\beta x\right\}'$ $\textstyle =$ $\displaystyle \left(\frac{p'\cos\beta x-p(-\beta\sin\beta x)}{\cos^2\beta x}
\times\cos^2\beta x\right)'$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle (p'\cos\beta x+\beta p\sin\beta x)'$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle p''\cos\beta x +p'(-\beta\sin\beta x) +\beta p'\sin\beta x
+\beta^2 p\cos\beta x$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle (p''+\beta^2 p)\cos\beta x$ (6)
となるので、(5) により、 $\beta=\sqrt{3}/{2}$ に対して
  $\displaystyle
\left\{\left(\frac{p}{\cos\beta x}\right)'\cos^2\beta x\right\}'
= C_1e^{3x/2}\cos\beta x$ (7)
となることがわかる。

これを積分していけばよいのであるが、右辺の積分はあまり易しくない。 微分で考えると、

\begin{eqnarray*}\left(e^{3x/2}\cos\beta x\right)'
&=&
\frac{3}{2}\,e^{3x/2}\c...
...eft(\frac{3}{2}\sin\beta x
+\frac{\sqrt{3}}{2}\cos\beta x\right)\end{eqnarray*}
となるので、 右辺から $e^{3x/2}\sin\beta x$ を消去すれば、
$\displaystyle \left(\sqrt{3} e^{3x/2}\cos\beta x
+e^{3x/2}\sin\beta x\right)'
= 2\sqrt{3} e^{3x/2}\cos\beta x
$
となるので、(7) は
$\displaystyle \left\{\left(\frac{p}{\cos\beta x}\right)'\cos^2\beta x
- \frac...
...qrt{3}} e^{3x/2}
\left(\sqrt{3}\cos\beta x
+\sin\beta x\right)\right\}' = 0
$
となるので、よって、
$\displaystyle \left(\frac{p}{\cos\beta x}\right)'\cos^2\beta x
- \frac{C_1}{2\sqrt{3}} e^{3x/2}
\left(\sqrt{3}\cos\beta x
+\sin\beta x\right) = C_2
$
となり、よって
  $\displaystyle
\left(\frac{p}{\cos\beta x}\right)'
= \,\frac{C_1}{2\sqrt{3}}\,...
...{\sqrt{3}\cos\beta x+\sin\beta x}%
{\cos^2\beta x}
+\frac{C_2}{\cos^2\beta x}$ (8)
となる。 ここで、
$\displaystyle \left(\frac{e^{3x/2}}{\cos\beta x}\right)'
=
\frac{(3/2)e^{3x/2}\...
...sqrt{3}}{2}\,e^{3x/2}\frac{\sqrt{3}\,\cos\beta x+\sin\beta x}%
{\cos^2\beta x}
$
なので、(8) は、
$\displaystyle \left(
\frac{p}{\cos\beta x}
- \frac{C_1}{3} \frac{e^{3x/2}}{\cos\beta x}
- \frac{C_2}{\beta}\tan\beta x\right)' = 0
$
と書くことができ、よって
$\displaystyle \frac{p}{\cos\beta x}
- \frac{C_1}{3} \frac{e^{3x/2}}{\cos\beta x}
- \frac{2C_2}{\sqrt{3}}\tan\beta x = C_3
$
より、
$\displaystyle p =  \frac{C_1}{3} e^{3x/2} + \frac{2C_2}{\sqrt{3}}\sin\beta x
+C_3\cos\beta x
$
よって、$y=pe^{-x/2}$ より、
  $\displaystyle
y =  \frac{C_1}{3} e^x
+ \frac{2C_2}{\sqrt{3}} e^{-x/2}\sin\frac{\sqrt{3}}{2} x
+C_3e^{-x/2}\cos\frac{\sqrt{3}}{2} x$ (9)
が得られる。 つまり、(1) の解は、
  $\displaystyle
e^x,
\hspace{0.5zw}e^{-x/2}\sin\frac{\sqrt{3}}{2} x,
\hspace{0.5zw}e^{-x/2}\cos\frac{\sqrt{3}}{2} x$ (10)
の線形結合であることになる。 最初のものは 1 回の微分で元に戻るので、 実質的には後者 2 つが 3 回微分して元に戻る関数である。

なお、もしこの最終的なおおまかな形を知っていれば、 あるいはこのような形ではないかと予想がつけば、

$\displaystyle y=e^{\alpha x}\sin\beta x
$
のように置いて、これを (1) に代入して、 それが成立するように定数 $\alpha$, $\beta$ (実数) を求める、 という方法もある。
\begin{eqnarray*}y'''
&=&
(e^{\alpha x}\sin\beta x)'''
\\ &=&
(e^{\alpha x})...
...a x}\sin\beta x
+\beta(3\alpha^2-\beta^2)e^{\alpha x}\cos\beta x\end{eqnarray*}
なので、
  $\displaystyle
\alpha(\alpha^2-3\beta^2) = 1, \hspace{0.5zw}\beta(3\alpha^2-\beta^2) = 0$ (11)
であれば、 $y'''=y=e^{\alpha x}\sin\beta x$ になる。 (11) の後者より
$\displaystyle \beta = 0,\hspace{0.5zw}\pm\sqrt{3} \alpha
$
となるが、$\beta=0$ の場合は (11) の 前者より $\alpha=1$, よって $y=e^x$ となる。

$\beta=\pm\sqrt{3} \alpha$ の場合は $-8\alpha^3=1$ より $\alpha = -1/2$, よって $\beta = \mp\sqrt{3}/2$ となり、(10) の 2 つ目のものが得られる。 同様に $y=e^{\alpha x}\cos\beta x$ とすれば (10) の 3 つ目のものが得られる。

竹野茂治@新潟工科大学
2021-12-03