2 定義

私が講義で説明している、行列式の「帰納的な」定義は以下の通りである:


定義 1

$n$ 次の正方行列 $A=[a_{ij}]$ に対し、$A$ の行列式 $\vert A\vert$

\begin{displaymath}
\vert A\vert=
\left\{\begin{array}{ll}
\displaystyle \sum...
... のとき})\\
a_{11} & (n=1\mbox{ のとき})
\end{array}\right. \end{displaymath} (1)

と定める。ここで、 $\Delta_{ij}=\Delta_{ij}(A)$ は、 $A$$i$ 行目と $j$ 列目を取り除いた $(n-1)$ 次の行列の行列式とする。


つまり、ひとつ低い次数の行列式を使っての定義であり、 例えば、

$\displaystyle \left\vert\begin{array}{cc}a_1&a_2\\  b_1&b_2\end{array}\right\vert$ $\textstyle =$ $\displaystyle a_1\vert[b_2]\vert-a_2\vert[b_1]\vert
=
a_1b_2-a_2b_1,$ (2)
$\displaystyle \left\vert\begin{array}{ccc}a_1&a_2&a_3\\  b_1&b_2&b_3\\  c_1&c_2&c_3\end{array}\right\vert$ $\textstyle =$ $\displaystyle a_1\left\vert\begin{array}{cc}b_2&b_3\\  c_2&c_3\end{array}\right...
...ht\vert
+a_3\left\vert\begin{array}{cc}b_1&b_2\\  c_1&c_2\end{array}\right\vert$ (3)

のようになっていて、1 次、2 次、3 次と順に定義されることになる。 このような定義を 帰納的な定義 という。

竹野茂治@新潟工科大学
2006年12月8日