3 定理のバリエーション

ロピタルの定理 1 には、 色んな細かいバリエーションがある。それをこの節で紹介する。

まずは、定理 1 の条件 1$a$ と区間に関するもので、 $J$$J=[a,b)$、または $J=(c,a]$ として、 極限を $\displaystyle \lim_{x\rightarrow a+0}$、または $\displaystyle \lim_{x\rightarrow a-0}$ の片側極限とする バリエーションがある。

さらに、$a=\infty$、または $a=-\infty$ とし、 $J$$J=(K,\infty)$、または $J=(-\infty,K)$ のような半無限区間とし、 の条件 3 $\displaystyle \lim_{x\rightarrow \infty}f(x)=\displaystyle \lim_{x\rightarrow \infty}g(x)=0$、または $\displaystyle \lim_{x\rightarrow -\infty}f(x)=\displaystyle \lim_{x\rightarrow -\infty}g(x)=0$ とし、 極限を $\displaystyle \lim_{x\rightarrow \infty}$、または $\displaystyle \lim_{x\rightarrow -\infty}$ とする バリエーションがある。

これらに対しても、ロピタルの定理の結果は そのまま成り立つことが知られているが、 このような $x$ の収束先 ($a$) の変更が 5 通りある。

また、不定形が $\displaystyle \frac{0}{0}$ でなく $\displaystyle \frac{\infty}{\infty}$ の場合のバリエーションもある。 つまり、条件 3 を 「 $\displaystyle \lim_{x\rightarrow a+0}f(x)=\infty$ $\displaystyle \lim_{x\rightarrow a+0}g(x)=\infty$」 などとした場合であるが、 この場合もロピタルの定理が成立することが知られているが、 この極限の $\infty$$-\infty$ に 置き換えることもできるので、それだけで 4 通りあり、 上と同様の $x$ の収束先の変更も考えるとそれがそれぞれ 4 通りある (この場合は $\displaystyle \lim_{x\rightarrow a}$ は考えず、通常片側極限を扱う) ので、 全部で 16 通りあることになる。

ここまでで 21 通りのバリエーションがあることになるが、さらに、 (1) の $\beta$ が、有限な値ではなく、 $\infty$$-\infty$ の場合でも定理が成り立つことが知られている。 すなわち、「$I_1=\infty$ ならば $I_0$$I_0=\infty$ となる」 といった形である。 よって、これらを上の 21 通りすべてに適用すれば、 合計で 63 通りのバリエーションがあることになる。

もう一度、分類を整理してみる。 すべてのパターンを $(p,q,r)$ のような記号で表現する。 各成分の意味は以下の通り。

このうち、$q$ $\displaystyle \frac{\infty}{\infty}$ の場合は、通常 $p=a$ を外して考えるので、 全部で $5\times 5\times 3 - 4\times 1\times 3 = 63$ 通りとなる。

通常、教科書に載っている証明は、 実質的に $(a+0,0/0,\beta)$ に対するもののみであることが多く、 あとは「他も同様」で片づけられていることが多いと思う。

ただ、$(\infty,q,r)$ の場合の証明は $(a+0,q,r)$ の場合とは 少し違いがあるし、 $\displaystyle \frac{\infty}{\infty}$ の不定形の場合はさらに異なる。

よって、次節以降でこれらのうち典型的なものに関する証明を いくつか紹介する。

竹野茂治@新潟工科大学
2015年7月20日