次へ: 7 その他の証明 上へ: ε-δのお話 前へ: 5 積の収束の証明 (PDF ファイル: epsdlt1.pdf)


6 関数の収束

数列の場合と同様に、関数の極限

\begin{displaymath}
\lim_{x\rightarrow a}f(x)=\beta\end{displaymath}

は、「$x$$a$ に近づくときに、$f(x)$ の値が限りなく $\beta$ に近づくこと」 であるから、これは次のように定義される。


定義 4


\begin{displaymath}
\lim_{x\rightarrow a}f(x)=\beta\end{displaymath}

とは、どんな正の数 $\varepsilon$ ($>0$) を取っても、
$x\neq a$ かつ $\vert x-a\vert<\delta$ ならば $\vert f(x)-\beta\vert<\varepsilon$
となるような $\delta$ を取ることができること、を意味する。


なお、ここに「$x\neq a$」というものが入っているが、 関数の極限では $x=a$ での値、 すなわち $f(a)$$\beta$ に近いかどうかは問わない (逆に、この極限 $\beta$$f(a)$ に等しいときは $f(x)$$x=a$ で「連続」であるという)。

このような極限の定義は A.L.Cauchy (1789-1857, 仏) によって始められた極限の定義方法であるが、 よく「$\varepsilon$ - $\delta$ 論法」と呼ばれている。

理学部数学科向けの数学の本では、英語を直訳したような独特の表現で、

任意の正数 $\varepsilon$ ($>0$) に対して ある $\delta$ ($>0$) が存在し、
$x\neq a$ かつ $\vert x-a\vert<\delta$ ならば $\vert f(x)-\beta\vert<\varepsilon$
となる
のように書いたり、さらに「任意の」を「$\forall$」、 「ある$\sim$ が存在する」を「$\exists$」のように記号的に書いて、
$\forall\varepsilon$ ($>0$), $\exists\delta$ ($>0$), s.t. $x\neq a$ かつ $\vert x-a\vert<\delta$ ならば $\vert f(x)-\beta\vert<\varepsilon$
(s.t. $=$ such that ($\sim$ を満たすような))
のように書いたりすることもある。 慣れればなんでもないのであるが、 初学者はこのような妙な言いまわしにとまどうことも多い。


次へ: 7 その他の証明 上へ: ε-δのお話 前へ: 5 積の収束の証明
竹野茂治@新潟工科大学
2006年3月31日