9 最後に

本稿では、厳密な条件は多少省略して、 単独の保存則の減衰を示す方法の概要、 およびそれと連立の保存則方程式との関係について紹介した。

もちろん、単独の保存則方程式については、 他にも減衰を示す方法はあるが、 ここでは、私の個人的な興味で補償コンパクト性理論で用いられる 粘性近似解に対する方法を説明した (例えば [5] はそれを Lax-Friedrichs 型の差分に 応用した結果である)。 本当は、7 節で紹介した連立の保存則方程式に対して 減衰評価を示したいのであるが、 7 節で述べたように この方法のままでは残念ながらうまくいかない。

実は連立保存則方程式に対しては、Glimm の方法等では研究が進んでいるものの、 人工粘性近似解に対してはまだあまりちゃんとした結果は得られてはおらず、 本稿はそれに対して直接役立つものではないが、 この問題を考える人の何らかの参考となり、 新たな手法を考えるときの何かのたしにでもなれば、と思っている。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年1月25日