1 はじめに

本稿では、単独保存則方程式
  $\displaystyle
u_t + f(u)_x = 0$ (1)
の、局所的に有界変動でない初期値 $u_0(x)$ に対するエントロピー解で、 $t>0$ では有界変動となる例を紹介する。 ここで、$u=u(t,x)$ は実数値関数、$f(u)$ は、 考える $u$ の範囲では $C^2$ 級で $f''(u)>0$ であるものとする。

初期値が有界 ( $u_0\in L^\infty(\mbox{\boldmath$R$})$) である場合、 大域的なエントロピー解が存在することが Oleinik によって示されていて ([1])、 そのエントロピー解は $t>0$ では $x$ に関して局所的に 有界変動 ( $u(t,\cdot)\in BV_{loc}(\mbox{\boldmath$R$})\cap L^\infty(\mbox{\boldmath$R$})$) であることも 示されている ([2])。 本稿では、実際に初期値が有界だが局所的に有界変動ではなく ( $u_0\in L^\infty(\mbox{\boldmath$R$})\setminus BV_{loc}(\mbox{\boldmath$R$})$)、それに対するエントロピー解が $t>0$ で 実際に局所的に有界変動 ( $u(t,\cdot)\in BV_{loc}(\mbox{\boldmath$R$})\cap L^\infty(\mbox{\boldmath$R$})$) であるような 具体例を紹介する。

竹野茂治@新潟工科大学
2024-02-21