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5 準線形方程式
特性曲線が、解
自身によって変化する場合はまた事情は異なる。
例えば、非粘性バーガース方程式と呼ばれる次の非線形方程式
 |
(17) |
を考えてみる。この方程式の場合特性曲線は
 |
(18) |
によって決定する。しかし、この
は与えられているものではなく、
方程式によって決まる
であるから、これをこのまま解くことはでき
ない。しかし、とりあえず、(17) の解
があったと
して、その
に対し (18) を満たす関数
が存在したとして話を進めてみる。つまり
は
 |
(19) |
を満たすとする。このとき、この特性曲線
に沿っての
の
値を調べてみる。
とすると (19) などにより
となる。よってこの特性曲線に沿って
は定数になるので、前と同様
に
となり
を得る。
特性曲線に沿って
が定数であるということは、これを
(19) に戻してみれば
ということであり、つまりこの曲線の傾きは定数で、
となる。
特性曲線が存在するとして、方程式を用いると、特性曲線上での
の値が求まり、
それによって特性曲線自身を求めることができる、ということになるわけである。
この特性曲線
は、
の一次式で直線となるが、前の場合と違いその傾き
は
定数ではなく、出発点
によって変わり得る。
言い替えれば、
を出発して特性曲線に沿って動く点の速度は
によって異なる。
その傾きは
、すなわち
によって変化し、
によっ
ては特性曲線全体が領域を埋め尽くさないこともあるし、特性曲線が交わるこ
とも起こりうる。
線形、半線形の方程式ではこういうことは起こらないが、
の係数が
にも関係する形
の場合はこのようなことが起こる。このような形の非線形方程式を
準線形 と呼ぶ。
今の方程式 (17) の場合、特性曲線
 |
(20) |
に沿って
の値は定数であったので、その
の値は
 |
(21) |
に等しい。特性曲線に沿って定数であるということは、
方向の点の運動という形で考えてみれば、
のときに
を出発し速度
で運動する点から見れば
のグラフの高さは
のまま変わらない、ということになる。
グラフの高さ
と特性曲線に沿う点の速度
とが等しい
ということは、
のグラフの、高い位置にある点ほど速く進み、
低い位置にある点ほど遅く進む、ということになる。
これが進行していくと、高い位置の点が低い位置の点を追い越してしまうよ
うなことが起きて、
の値が一つに決まらなくなってしまう。これは
複数の特性曲線が交わるような場合に起こる。
図 14:
追い越して
が関数でなくなる例
|
この問題は、``弱解'' という、不連続な解の概念を導入することにより
解決されている。この不連続な解は、流体力学での物理現象
との対応により衝撃波と呼ばれている。
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Shigeharu TAKENO
2001年 9月 21日