1 はじめに

「一次独立」「一次従属」という用語は、 元はベクトルの集まりに対するものだが、 工学では関数の集まりに対しても用いられ、 線形微分方程式の理論などで目にすることが多い。

それは、「関数」を抽象化された一般的な「ベクトル」と考えていることに なるのであるが、 「ベクトル」という言葉に引きづられてしまうと、 初学者は誤解しがち、あるいは概念の取得が難しくなるため、 「ベクトル」「ベクトル空間」という言葉を使わずに説明している本が 多いように思う。

逆にそのためか、やや誤解が生じているかのような質問を、 最近ネット上でいくつか目にした。 本稿ではまずそのあたりについて、 抽象化された一般的なベクトル空間の話をすることで説明する。

また、関数の集まりの一次独立性の判定には、 ロンスキー行列式 (ロンスキアン) が用いられることも多いが、 このロンスキー行列式の使い方についても誤解している質問が いくつか見受けられた。 それに関しても、教科書には通常書かれていないことも含めて 本稿で説明する。

なお、本稿の主な対象は、関数に対する一次独立性、一次従属性などを学ぶ学生、 例えば、大学工学部などで線形常微分方程式を学ぶ学生を考えている。

竹野茂治@新潟工科大学
2026-02-17