2 実際の確率と r とのずれ

以後、簡単のために RAND_MAX$R_M$ と書くこととし、 rand() の値を意味する $x$ は、0 から $R_M$ までの整数値を一様にとる 確率変数であるとする。

この場合、$x=j$ ( $j=0,1,2,\ldots,R_M$) である確率はすべて等しいことになる ので、

\begin{displaymath}
\mathrm{Prob}\{x=j\}  (=\mbox{「$x=j$ である確率」}) = \frac{1}{R_M+1}\end{displaymath} (1)

となる。

1 節で紹介した方法では、 $x\leq R_M\times r$ となるとき 1 となるようにしているが、 この確率

\begin{displaymath}
P_1 = \mathrm{Prob}\{x\leq R_M\times r\} (=\mbox{「$x\leq R_M\times r$ である確率」})
\end{displaymath}

がほぼ $r$ に等しいことが期待される。

以下、まず一般の負でない実数 $t$ に対して、確率

\begin{displaymath}
P=\mathrm{Prob}\{x\leq t\}
\end{displaymath}

$t$ の式であらわすことを考えてみる。 $x$ は実際には整数の値しか取らないので、
\begin{displaymath}
P=\mathrm{Prob}\{x\leq \lfloor t\rfloor\}
\end{displaymath}

に等しい。ここで、 $\lfloor t\rfloor$ は、 $t$ 以下の最大の整数を表わすものとし2、 例えば $\lfloor 3.2\rfloor=3$, $\lfloor 3\rfloor=3$ となる。

よって、(1) より、

$\displaystyle P$ $\textstyle =$ $\displaystyle \mathrm{Prob}\{x=0\} + \mathrm{Prob}\{x=1\} + \cdots +\mathrm{Prob}\{x=\lfloor t\rfloor\}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{\lfloor t\rfloor+1}{R_M+1}$ (2)

となる。この公式 (2) を用いれば $P_1$
\begin{displaymath}
P_1 = \mathrm{Prob}\{x\leq R_M\times r\}
= \frac{\lfloor R_M\times r\rfloor+1}{R_M+1}\end{displaymath} (3)

となる。

ところで、 $\lfloor t\rfloor$ は定義、 あるいは図 1 のグラフより不等式

\begin{displaymath}
t-1<\lfloor t\rfloor\leq t\end{displaymath} (4)

を満たすことがわかる。
図: $\lfloor x\rfloor$ のグラフ
\includegraphics[width=0.4\textwidth]{floor.eps}

(3), (4) より、$P_1$

\begin{displaymath}
\frac{R_M r}{R_M+1}<P_1\leq \frac{R_M r+1}{R_M+1}
\end{displaymath}

を満たすので、よって、$P_1-r$ については
\begin{displaymath}
-\frac{r}{R_M+1}<P_1-r\leq \frac{1-r}{R_M+1}\end{displaymath} (5)

が成り立つ。$0\leq r\leq 1$ だから、$R_M$ が十分大きければ (5) の両端の値は十分 0 に近くなり、 よってそれなりに $P_1$$r$ に近いことになる。
竹野茂治@新潟工科大学
2007年5月31日