2 設定

問題の設定として、[1] と同じ、以下のものを仮定する。

なお、考える硬貨系は、[1] と同じ、一般化した硬貨系とする。 すなわち、

\begin{displaymath}
j_1 = 1 < j_2 < \cdots <j_m
\end{displaymath}

の額の硬貨が、$N_{j_k}\geq 2$ ($1\leq k\leq m$) に対して
\begin{displaymath}
j_k = \prod_{i=1}^{k-1}N_{j_i}\hspace{1zw}(k\geq 2)
\end{displaymath}

を満たし、札の金額 $M_c$
\begin{displaymath}
M_c = \prod_{i=1}^{m} N_{j_i}
\end{displaymath}

であるとする。この場合各硬貨 $j_k$ の必要枚数は $N_{j_k}-1$ 枚で、 それに対して、[1] の命題 1, 2 が成り立つ。

命題 1. ([1])

この硬貨系では、各硬貨の必要枚数以内で $M_c$ 未満の金額は すべて表現でき、そしてそのような表現は一意的である。

命題 2. ([1])

必要枚数以内という制限を外して考えた場合、 $M_c$ 未満の金額の表現は、常に必要枚数以内の表現が枚数は最小となり、 その最小を与える表現は一意的に決定する。

この命題 1, 2 は、この硬貨系の基本的な命題であり、 本稿では中心的な役割を果たす。 命題 1 の証明はそれほど長くはないし難しくもない ([1] 参照)。 命題 2 も、必要枚数を越えている表現は両替して より少ない枚数の表現に変換できることを考えれば、 命題 1 から導くのは難しくはない。

なお、今後この硬貨系の必要枚数以下の小銭しかない状態を、 「冗長性がない」と呼ぶことにする。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年12月20日