2 ゲーム差とは

まず、ゲーム差とは何かを説明する。

ある 2 チームのゲーム差が 1 というのは、 (勝数)$-$(負数) ($=$「貯金」と呼ばれる) が、 1 回直接対戦することで同じになる可能性がある状態を指す。 例えば、5 勝 2 敗 (貯金 3) のチーム A と 3 勝 2 敗 (貯金 1) のチーム B は、 直接対戦して B が A に勝てば 5 勝 3 敗と 4 勝 2 敗となり、 どちらのチームも貯金 2 となって並ぶから、この状態をゲーム差 1 と見るわけである。

すなわち A と B のゲーム差は、

$\displaystyle {\frac{1}{2}\{(\mbox{A の貯金})-(\mbox{B の貯金})\}}$
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{1}{2}\{((\mbox{A の勝数})-(\mbox{A の負数}))
-((\mbox{B の勝数})-(\mbox{B の負数}))\}$ (1)

によって定義される (ゲーム差の最小単位は 0.5)。

ゲーム差は、勝率上位チームの貯金から勝率下位チームの貯金を 引いて計算することが通常で、負のゲーム差を考えることはないようである。 しかし、よく考えてみればわかるように、3 チーム以上のリーグ戦の場合は、 勝率による順位でゲーム差を計算すると負のゲーム差、 すなわち勝率と貯金の順位が逆点することが起こりうる。 それが起こる条件をまず考えてみよう。

今、A の勝数、負数をそれぞれ $x_A$, $y_A$、 B の勝数、負数をそれぞれ $x_B$, $y_B$ とし、 引き分けはないとする。3 チーム以上のリーグ戦の場合、 $x_A+y_A=x_B=y_B$ である保証はないことに注意する。

このとき、A, B の勝率は、それぞれ

\begin{displaymath}
\frac{x_A}{x_A+y_A},\hspace{1zw}\frac{x_B}{x_B+y_B}
\end{displaymath}

だから、A の方が勝率が高いとすれば
\begin{displaymath}
\frac{x_A}{x_A+y_A}>\frac{x_B}{x_B+y_B}
\end{displaymath}

であり、これを変形すれば
\begin{displaymath}
x_A(x_B+y_B)>x_B(x_A+y_A)
\end{displaymath}

であるから、これは
\begin{displaymath}
x_Ay_B>x_By_A\end{displaymath} (2)

を意味する。一方、B の貯金が A の貯金を上回るのは、
\begin{displaymath}
x_B-y_B>x_A-y_A
\end{displaymath}

だから、これは
\begin{displaymath}
x_A+y_B<x_B+y_A\end{displaymath} (3)

となる。 この (2) と (3) が同時に満たされる場合に 逆転が起こることになる。

和が一定の 2 正数の積は、その 2 数が等しいときに最大となるから、 (2) は $x_A$$y_B$ が近く、 $x_B$$y_A$ が離れていると起こりやすくなる。 よって例えば、$x_A=y_B=3$, $x_B=7$, $y_A=1$ とすると (2), (3) は同時に満たされる。 実際、

\begin{displaymath}
\mbox{A の勝率} =\frac{3}{3+1}=0.75,\hspace{1zw}
\mbox{B の勝率} =\frac{7}{7+3}=0.7
\end{displaymath}

であるが、A の貯金 $= 3-1=2$, B の貯金 $=7-3=4$ なので 貯金は $B$ の方が上位 (ゲーム差 1) と逆転することになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年7月27日