10 最後に

本稿ではインターネット上の質問を題材に超関数のフーリエ級数に関する解説を 行った。フーリエ変換に関する話は超関数の多くの本に書かれているが、 フーリエ級数については省略されているものも多いので、 本稿も多少は意味があるだろう。

最後に、私が知る (記憶している) 超関数の参考文献を、 和書を中心に一通り紹介しておく。

[1] は、偏微分方程式の現代的な入門書で、 超関数についてもコンパクトに説明している。 [2] は、雑誌「数理科学」の「臨時別冊 SGC ライブラリ」 というシリーズの 1 冊で、例などを上げながら 偏微分方程式への応用を丁寧に紹介している。 いずれも超関数の入門としては適当だろうと思う。 しかし、いずれも超関数の「フーリエ変換」は取り上げているものの、 超関数の「フーリエ級数」については書いていない。

本稿は、主に [3] に従って書いたが、 短く説明するため、話の流れや証明は、[3] とは だいぶ変えている。 [4] は、現物は持っていないが、 目次を見た感じでは [3] とほぼ同じで、 多分 [3] の改訂版のようなものだろう。 [5] は、これらの和訳ではないが、 超関数についても触れていて、その部分は [3] と かなり共通する (と記憶している)。 ただし、[5] は現在は手に入れるのはかなり難しい。

[6] から [11] までは、 多分大学数学科の図書室にはあるだろうが、 現在一般に手に入れるのはかなり難しい。 [6], [7] は、 超関数を数学的に定式化したシュワルツの本であり、 [6] はタイトルは超関数ではないが、 超関数の計算方法などが丁寧に書かれていて、 周期超関数のフーリエ級数についても章を作って解説している。

[8] は、超関数の空間の位相を丁寧に解説したもの、 [9] は、前半が超関数と関数空間、 後半が偏微分方程式 (だったと思う) の演習書で、 いずれも現在手に入りにくいのが非常に残念である。

[10] は、岩波基礎数学シリーズの中から 成書化されたもので、前半はフーリエ級数と常微分方程式と超関数、 後半がルベーグ積分で、とてもわかりやすい本であるが、 超関数のフーリエ級数については触れていない。

[11] は、超関数のしっかりした本であり、 一度 1999 年に復刊されたようであるが、また現在は入手できないようである。 今手元にはないので、 超関数のフーリエ級数について書いてあるかはよくわからない。

ところで、最近 (といってももう何年も経つが)、 かなり古い (1956 年) 超関数の本 [12] が復刊されたようである。 記号や書き方などが少し現在からすると学びにくいだろうし、 入門向きではないと思うが、 超関数のそれなりにちゃんとした本が手に入るのはありがたいことだと思う。 超関数のフーリエ級数も書かれているようである。

竹野茂治@新潟工科大学
2015年6月1日