1 はじめに

ベクトル解析の教科書には、次のようなベクトル三重積の公式がある。
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$A$}\times(\mbox{\boldmath$B$}\times\mbox{\b...
...\mbox{\boldmath$A$}\cdot\mbox{\boldmath$B$})\mbox{\boldmath$C$}\end{displaymath} (1)

これは、それなりに幾何学的な意味も持った公式であるが、 この公式の証明は、手近な本ではほとんどが成分計算による確認に留まっている ([1], [2], [3], [4], [5], [6], [7], [9], [11])。 [8], [10] は、証明は成分計算で行っているものの、 筆者が物理学者や工学者であるためか、幾何学的な意味の補足をつけ加えている。

しかし以前から、

「成分計算による証明は確実であるが『確認』にしかなっておらず、 なぜこのような公式 (1) が成り立つのかという 説明にはなっていない」
と感じていた。 しかし、[8], [10] で触れているような 幾何学的な補足を証明にしようとすると、 「なぜ成り立つか」は分かりやすくなるが、 逆に証明する上での難点が一つあり、必ずしも易しくはない。

本稿では、これらの証明に加え他の証明も検討し、考察してみることにする。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年5月21日