1 はじめに

以前、[3] で、地球の中心からの重力を考えた場合の 地中の最速降下線を考察し、特に地中が均質である場合は、 それが以下のような極座標形式の式で与えられることを示した。
    $\displaystyle \left\{\begin{array}{ll}
x &= Y\cos H(Y)\\
y &= Y\sin H(Y)\\
\end{array}\right. \hspace{1zw}(R/k_2\leq Y\leq R),$ (1)
    $\displaystyle \left\{\begin{array}{ll}
x &= Y\cos (\phi_0-H(Y))\\
y &= Y\sin (\phi_0-H(Y))\\
\end{array}\right. \hspace{1zw}(R/k_2\leq Y\leq R)$ (2)

ここで、$R$ は地球の半径、経路は地表の A$(R,0)$ から B $(R\cos\phi_0,R\sin\phi_0)$ に至る地中の経路であり、 $0<\phi_0<\pi$ とし、 それに対する $\phi_0/2$ 以下の偏角の部分の曲線が (1)、 $\phi_0/2$ 以上の部分の曲線が (2) であった。 $H(Y)$ は、
\begin{displaymath}
H(Y) = \arctan \sqrt{\frac{R^2-Y^2}{k_2^2Y^2-R^2}}
-\frac{1}{k_2}\arctan k_2 \sqrt{\frac{R^2-Y^2}{k_2^2Y^2-R^2}}\end{displaymath} (3)

であり、$k_2$
\begin{displaymath}
k_2 = \frac{\pi}{\pi-\phi_0}\hspace{1zw}(>1)\end{displaymath} (4)

である。

そして、[3] の最後に、 「この曲線はサイクロイドではないし、具体的な名前がついている曲線なのかは わからない」と書いたが、[4] によれば、 この均質な場合の地中の最速降下線は内サイクロイドであるようなので、 本稿ではそれを確認してみる。

なお、[3] では、(1), (2), (3) に代わる、$\arcsin$ による特異性のない式 ($\bar{H}(\xi)$) も紹介したが、どちらで考えてもほぼ同等であるので、 今回は (1), (2), (3) で 考えることにする。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年8月2日