1 はじめに

以前、[1] で鉛直真下方向の重力に対する 2 点間の 最速降下曲線について考察し、それがサイクロイドであることを説明した。 その事実は割と有名で、最速降下曲線と変分法に関する資料は インターネット上にも多く公開されている。 そして、その中にはその応用として、 例えば地球上のかなり離れた 2 地点でも、 地中にサイクロイドのトンネルを掘れば、 摩擦や空気抵抗がなければ 何百 km をエネルギーなしで数分という短い時間でたどりつく、 という話を紹介しているものもある。

確かに、2 地点が数百 km 程度の距離であれば、 地球全体から見ればそのトンネルはかなり地表近くなので、 重力はその行程で平行に鉛直真下にかかると考えてよいだろうし、 地中での重力の強さも一定と考えていいだろう。 しかし、その 2 地点が地球の大きさに比べてかなり離れた場所で、 そのトンネルがかなり深くなれば、 重力の方向は地球の中心を向くためその行程で平行ではなくなり、 深いトンネルでは重力の大きさも変わってくる。 よって、その場合は最速降下曲線はサイクロイドとは別の曲線になりうる。

本稿では、そのような地中内部にトンネルを掘った場合の 最速降下曲線について考察する。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年2月24日