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(PDF ファイル: cd1.pdf)
6 数値計算の際の注意
5 節で紹介した数値計算の計算値は電卓、
及びコンピュータ上での電卓程度のもので求めましたが、
実は、単に や に直接値を代入して引き算したものではありません。
それだと引き算する両者がかなり大きな値になって、
本来出てくる小さい値は誤差が大きくなってしまいます
(いわゆる桁落ち)。
5 節でも桁落ちが起こらない、引き算を整理した式
を紹介しましたが、実はこれも使っていません。
電卓を使ってみればわかりますが、
例えば
のときに を計算するのは
あまり得ではなくて、代わりに を使えば十分です。
つまり、実際には数式をそのまま計算に使用しているのでなく、
必要な桁数を考えながら近似式を使って計算しています。
この節では、 が大きな に対して
どのような近似式で近似できるかを考えてみます。
が小さければテイラー展開で済みますが、
今回は は大きな値なのでそうはいきません。
まず、 の後ろの対数の項ですが、
と思えば
となります。実際にこの誤差がどれくらいであるか見てみます。
誤差を
のように変形すると、
なので、 が大きい、つまり が小さいときは
も小さくなります。
良く知られているように が小さいときは
ですから (マクローリン展開)、
となります。一方で、
ですから、
よって、
|
(6) |
となります。
今度は の最初の項ですが、
これも
と思えば、
となりますので、この誤差を考えます。
となるので、 とすれば、
および
より
となり、よって
|
(7) |
となります。結局、(6),(7) により
|
(8) |
となることがわかります。
このような、大きな に対する関数の展開式を「漸近展開」と呼びます。
実は 5 節の最後の計算ではこの式を用いて
( 以降の項を無視して)、
のような計算を行いました。
のような大きな値の場合、 は
程度の小さな値になりますからこれで問題はありません。
数値計算や数式の様子を調べる現場では、テイラー展開だけではなくて、
このような漸近展開も広く使われています。
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竹野茂治@新潟工科大学
2005年9月23日