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3 らせんの弧長

溝は円のように回っていますが、実際には少しずつ半径が変化していて、 一周すると $d$ だけずれることになります。

最も内側からスタートするとして中心からの距離 $\rho$ と回転角 $\theta$ の関係を考えてみます。 角度の増加に対し均等に中心からの距離が増えると仮定すると、 $\rho$ は回転角 $\theta$ の一次式で表わされます。 一周で $d$ だけ増えるわけですから、 単位角度 (1 ラジアン) 辺りの $\rho$ の増加は $d/2\pi$ となります。 よって、$\theta=0$ のとき $\rho=r$ とすれば $\rho$

\begin{displaymath}
\rho=r+\frac{d}{2\pi}\theta\end{displaymath} (2)

という式で表わされることになります。$\rho=R$ のときの $\theta$

\begin{displaymath}
R=r+\frac{d}{2\pi}\theta, \hspace{1zw}
\theta = \frac{2\pi(R-r)}{d}
\end{displaymath}

より、$\theta$ の動く範囲は $0\leq\theta\leq 2\pi(R-r)/d$ となります。

一般に曲線上の点が $\rho=f(\theta)$ で表わされているとき、 $\theta=a$ から $\theta=b$ の範囲の曲線の長さ $L$ は次の式で求められます。

\begin{displaymath}
L = \int_a^b\sqrt{f(\theta)^2+\{f'(\theta)\}^2} d\theta\end{displaymath} (3)

この公式の説明は 4 節で行ないます。 この公式より、$L$ は以下のようになります。

\begin{displaymath}
L
=\int_0^{2\pi(R-r)/d}\sqrt{\rho(\theta)^2+\{\rho'(\theta)...
...2\pi}\theta\right)^2
+\left(\frac{d}{2\pi}\right)^2} d\theta
\end{displaymath}

この式を置換積分で変形していきます。

\begin{eqnarray*}L
&=&
\int_r^R\sqrt{\rho^2+\left(\frac{d}{2\pi}\right)^2}
...
...2)^2}
\hspace{1zw}(\sin\phi=t, \sin\phi_1=t_1, \sin\phi_2=t_2)\end{eqnarray*}

ここで、

\begin{eqnarray*}\frac{1}{(1-t^2)^2}
&=&
\left\{\frac{1}{2}\left(\frac{1}{1-t...
...{1-t}+\frac{1}{4} \frac{1}{1+t}
+\frac{1}{4} \frac{1}{(1+t)^2}\end{eqnarray*}

なので、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\int\frac{1}{(1-t^2)^2}dt}
 &=&
\frac{1}{4} \frac...
...+\left(\frac{2\pi}{d}\rho\right)^2}
+\frac{2\pi}{d}\rho\right)+C\end{eqnarray*}

となります。結局、
$\displaystyle {L=\frac{d}{2\pi}\int_{t_1}^{t_2}\frac{dt}{(1-t^2)^2}}$
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{d}{4\pi}
\left[
\frac{2\pi}{d}\rho\sqrt{1+\left(\frac{2\pi}...
...frac{2\pi}{d}\rho\right)^2}
+\frac{2\pi}{d}\rho\right)\right]_{\rho=r}^{\rho=R}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{d}{4\pi}
\left\{
\frac{2\pi}{d}R\sqrt{1+\left(\frac{2\pi}{d...
...)^2}}%
{\displaystyle \frac{2\pi}{d}r+\sqrt{1+\left(\frac{2\pi}{d}r\right)^2}}$ (4)

となることがわかります。 この式の最後の右辺を $L_2$ とします。


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竹野茂治@新潟工科大学
2005年9月23日