3 ガンマ関数

次は、前節の半径 1 の $n$ 次元球の体積 (9) を ガンマ関数 $\mathop{\mathit{\Gamma}}(p)$ で表すことを考える。

ガンマ関数 (2) は以下のような性質を持つことを 講義で紹介した。

  $\displaystyle
\mathop{\mathit{\Gamma}}(p+1)=p\mathop{\mathit{\Gamma}}(p)\hspac...
...}}(1)=1,\hspace{1zw}\mathop{\mathit{\Gamma}}\left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}$ (11)
これらについても説明する。

まず、(2) は $x\rightarrow\infty$ に関して 広義積分であるが、$0<p<1$$p$ に対しては、$p-1<0$ より $x\rightarrow+0$ の方も広義積分になっていることに注意する。

しかし、 $x\rightarrow+0$ では、$e^{-x}$ は有界 ($e^{-x}\leq 1$) で $x^{p-1}$ は可積分 (広義積分は収束) なので、 $x\rightarrow+0$ での 広義積分は収束する。 また、 $x\rightarrow\infty$ では、 $h_{p-1}(x)=x^{p-1}e^{-x/2}$ は有界で $e^{-x/2}$ は可積分なので、 $x\rightarrow\infty$ の広義積分も収束する。 なお、$h_{p-1}(x)$ の有界性は、

$\displaystyle h_{p-1}'(x)
= (p-1)x^{p-2}e^{-x/2}-\,\frac{1}{2}x^{p-1}e^{-x/2}
=\frac{1}{2}(2p-2-x)x^{p-2}e^{-x/2}
$
より $x>2p-2$ では減少することからわかる。 よって (2) は $p>0$ に対して収束する。

$p>0$ に対し、部分積分により、

\begin{eqnarray*}\mathop{\mathit{\Gamma}}(p+1)
&=&
\int_0^\infty x^pe^{-x}dx
...
...lim_{K\rightarrow \infty}{K^pe^{-K}}+p\mathop{\mathit{\Gamma}}(p)\end{eqnarray*}
となるが、$K^pe^{-K}$ の極限は、 $K^pe^{-K/2}=h_p(K)$ が有界で、 $e^{-K/2}\rightarrow 0$ となるから 0 に収束し、 これで (11) の最初のものが得られる。 残りのものは、直接計算して、
\begin{eqnarray*}\mathop{\mathit{\Gamma}}(1)
&=&
\int_0^\infty e^{-x}dx
\ =\ ...
...e^{-t^2}2tdx
\ =\
2\int_0^\infty e^{-t^2}dt
\ =\
\sqrt{\pi}\end{eqnarray*}
となる (最後の積分については、例えば [2] 参照)。

これらを用いると、自然数 $m$ に対し、

\begin{eqnarray*}2^m\mathop{\mathit{\Gamma}}(m+1)
&=&
2^mm!
\ =\
2^m m(m-1)...
... (2m+1)(2m-1)\cdots 3\cdot 1\sqrt{\pi}
\ =\
(2m+1)!!\sqrt{\pi}\end{eqnarray*}
となるので、(9) にこれらを用いると、$n=2m$ のときは、
$\displaystyle V_{2m}(1)
= \frac{2^m\pi^m}{(2m)!!}
= \frac{2^m\pi^m}{2^m\mathop{\mathit{\Gamma}}(m+1)}
=\frac{\pi^{n/2}}{\mathop{\mathit{\Gamma}}(n/2+1)}
$
となり、$n=2m+1$ のときは、
$\displaystyle V_{2m+1}(1)
= \frac{2^{m+1}\pi^m}{(2m+1)!!}
= \frac{2^{m+1}\pi^m...
...op{\mathit{\Gamma}}(m+3/2)}
=\frac{\pi^{n/2}}{\mathop{\mathit{\Gamma}}(n/2+1)}
$
となるので、結局 $V_n(1)$ はすべての自然数 $n$ に対して
  $\displaystyle
V_n(1) = \frac{\pi^{n/2}}{\mathop{\mathit{\Gamma}}(n/2+1)}$ (12)
と書けることになる。 よって、(8) より $A$
$\displaystyle A
= nV_n(1)
= \frac{n\pi^{n/2}}{\mathop{\mathit{\Gamma}}(n/2+1)}...
...thop{\mathit{\Gamma}}(n/2)}
= \frac{2\pi^{n/2}}{\mathop{\mathit{\Gamma}}(n/2)}
$
となるので、結局 (7) の $I_k$
  $\displaystyle
I_K = \frac{2\pi^{n/2}}{\mathop{\mathit{\Gamma}}(n/2)}\int_0^K r^{n-1}g(r)dr$ (13)
と書けることになる。

$r^{n-1}g(r)$$r\geq 0$ で可積分ならば、 (13) で $K\rightarrow\infty$ とすれば、

  $\displaystyle
I_\infty
=\int_{\mbox{\boldmath\scriptsize R}^n}g(\vec{x})d\ve...
...
= \frac{2\pi^{n/2}}{\mathop{\mathit{\Gamma}}(n/2)}\int_0^\infty r^{n-1}g(r)dr$ (14)
も得られる。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-08-02