4 定理の証明 その 2

前節の議論は、(5) の正、負の判別が 2 次関数の 知識で行えるところが容易だが、場合分けも必要で、 (6) は外に $\sin^2\theta$ がついているため $\theta$ の変化にともなう $g_\theta''(0)$ の変化の様子も ややわかりにくい。

それに対して、(5) をさらに変形して、 値の変化もわかりすくする方法もある。

三角関数の倍角の公式と、合成の公式を用いると、

$\displaystyle g_\theta''(0)$ $\textstyle =$ $\displaystyle A\,\frac{1 + \cos 2\theta}{2} + B\sin 2\theta + C\,\frac{1-\cos 2\theta}{2}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{A + C}{2} + \frac{A-C}{2}\cos 2\theta + B\sin 2\theta$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{A + C}{2} + K\sin(2\theta+\alpha)$ (7)

と変形できる。 ここで $\alpha$ は点 $(B,\ (A-C)/2)$ の偏角で、$K$
\begin{displaymath}
K
= \sqrt{\left(\frac{A-C}{2}\right)^2 + B^2}
= \sqrt{\left(\frac{A+C}{2}\right)^2 + B^2-AC}\end{displaymath} (8)

である。

(7) より、$g_\theta''(0)$$\theta$ の変化に伴い、 三角関数的 ($\sin x$ を拡大、縮小、平行移動した形) に 値が変化することがわかる。

$B^2-AC>0$ ならば (8) より

\begin{displaymath}
K = \sqrt{\left(\frac{A+C}{2}\right)^2 + B^2-AC} > \left\vert\frac{A+C}{2}\right\vert
\end{displaymath}

なので、(7) は $-K+(A+C)/2\ (<0)$ から $K+(A+C)/2\ (>0)$ の 値を変化し、よって方向 $\theta$ により正になったり負になったりする。

一方 $B^2-AC<0$ の場合は、

\begin{displaymath}
K = \sqrt{\left(\frac{A+C}{2}\right)^2 + B^2-AC} < \left\vert\frac{A+C}{2}\right\vert
\end{displaymath}

なので、$(A+C)/2 > 0$ なら $(A+C)/2 > K$ より (7) は常に正になり、 $(A+C)/2 < 0$ なら $(A+C)/2 < -K$ より (7) は常に負になる。

$B^2-AC<0$ だと $A\neq 0$, $C\neq 0$ でかつ $AC>0$ でなければ いけないので、 $(A+C)/2$$A$ の符号は等しい。 よって、この場合は $A>0$ なら $g_\theta''(0)$ は常に正、 $A<0$ なら $g_\theta''(0)$ は常に負となり、 前節と同じことが言えることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2014年11月14日