3 定理の証明 その 1

この節では、(5) を利用して、定理 38.2 の証明を行う。 (5) の $g_\theta''(0)$ の符号を調べ、 それにより $f(x,y)$ の各方向の凸性に関する考察を行う。

なお、 $\pi\leq\theta <2\pi$ の場合は、 直線 $\ell _\theta $ と直線 $\ell_{\theta-\pi}$ は 同じものになるので (逆向きになるだけ)、 $0\leq\theta <\pi$ の場合のみ考えればよい。

(5) は、$\theta\neq 0$ のときは、 $\sin\theta\neq 0$ より、

\begin{displaymath}
g_\theta''(0) = (Ap^2+2Bp+C)\sin^2\theta
\hspace{1zw}\left(p=\frac{\cos\theta}{\sin\theta}=\cot\theta\right)\end{displaymath} (6)

と書けることに注意する。

まず、$B^2-AC<0$ の場合を考える。

この場合は $A\neq 0$ ($A=0$ なら $B^2-AC=B^2\geq 0$) なので、 $\theta\neq 0$ であれば、$p$ の 2 次式 $Ap^2+2Bp+C$ の判別式 $D$

\begin{displaymath}
D=4B^2-4AC = 4(B^2-AC)<0
\end{displaymath}

となり、よって $Ap^2+2Bp+C$ はすべての $p$ に対して 0 にはならない。 よって、$A>0$ ならば、すべての $\theta$ ($0<\theta<\pi$) に対して $Ap^2+2Bp+C>0$, $A<0$ ならば、すべての $\theta$ ($0<\theta<\pi$) に対して $Ap^2+2Bp+C<0$ となる。

$\theta=0$ のときは、 $g_\theta''(0) = A$ なので、 これと (6) を合わせると、 結局 $B^2-AC<0$ の場合は、

となることがわかる。 これらはそれぞれ、すべての方向に対して下に凸、 すべての方向に対して上に凸であることを意味するので、 $f(x,y)$ がそれぞれ極小、極大となることがわかる。

次に $B^2-AC>0$ の場合は、判別式 $D$ が正なので、 2 次式 $Ap^2+2Bp+C$ は、ある範囲の $p$ では正の値を、 ある範囲の $p$ では負の値を取ることになる。 すなわち、$f(x,y)$ はある方向には下に凸、ある方向には上に凸となるので、 よってこれは極ではないことになる (鞍点)。

以上により、定理 38.2 が証明されたことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2014年11月14日