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2 互除法

定理 1 の証明は、 初等的な代数学の本にはたいてい載っている話であるが、 その証明には、いわゆる ユークリッドの互除法 と呼ばれる方法を用いる。 その互除法の原理となるのは、次の補題である。


補題 3

整式 $f(x)$ を整式 $g(x)$ で割った余りを $h(x)$ とするとき、

\begin{displaymath}
(f(x),g(x)) = (g(x),h(x))
\end{displaymath}

となる。


なお、$(f(x),g(x))$ は、$f(x)$$g(x)$ の 最大次数の共通因子 (最大公約数) を表すこととするが、 例えば $(4x^2,2x)$ の場合、$2x$ は 1 次式の共通因子であるし、 $x$ も同じ次数の共通因子なので、 これを一つに確定するために、$(f(x),g(x))$ の最高次の係数は 1 であるとする (よって例えば $(4x^2,2x)=x$ とする)。

補題 3 の証明

$f(x)$$g(x)$ で割った商を $q(x)$ とすると、

\begin{displaymath}
f(x)=g(x)q(x)+h(x)
\end{displaymath} (1)

と書ける。

今、 $(f(x),g(x))=p(x)$ とし、$f(x)$, $g(x)$$p(x)$ で割った商を $\alpha(x)$, $\beta(x)$ とすると $f(x)=\alpha(x)p(x)$, $g(x)=\beta(x)p(x)$ となるので、 (1) より

\begin{displaymath}
h(x)=f(x)-g(x)q(x)=p(x)\{\alpha(x)-\beta(x)q(x)\}
\end{displaymath}

となり、$h(x)$$p(x)$ を因子に持つことになる。 よって、少なくとも $g(x)$$h(x)$ の共通因子 $(g(x),h(x))$$p(x)$ で割り切れる。

逆に、 $(g(x),h(x))=r(x)$ とし、$g(x)$, $h(x)$$r(x)$ で割った商を $\gamma(x)$, $\delta(x)$ とすると、 $g(x)=\gamma(x)r(x)$, $h(x)=\delta(x)r(x)$ となるので、 (1) より

\begin{displaymath}
f(x)=g(x)q(x)+h(x) = r(x)\{\gamma(x)q(x)+\delta(x)\}
\end{displaymath}

となり、$f(x)$$r(x)$ を因子に持つことになる。 よって、少なくとも $f(x)$$g(x)$ の共通因子 $p(x)$$r(x)$ で割り切れる。 ゆえに $p(x)=r(x)$


2 つの整式の共通因子を求める場合、補題 3 により、 $f(x)$$g(x)$ の共通因子 $(f(x),g(x))$ を求めるときに、 $f(x)$$g(x)$ の割り算を行って、 $(f(x),g(x))$ を求める代わりに $(g(x),h(x))$ を求めればよいことになる。 そして今度は $g(x)$$h(x)$ で割った余り $r(x)$ があれば、 $(g(x),h(x))$ を求める代わりに $(h(x),r(x))$ を求めればよい。

$h(x)$$g(x)$ で割った余りなので少なくとも $\deg h<\deg g$ であり、 この作業を繰り返すことで、計算する整式の次数は確実に下がっていく。 よって、最後は余りが 0 次式、すなわち定数になるが、 その定数が 0 に等しければ、最後の割り算は割り切れたことになるので、 その割った式が $f(x)$ $g(x)$ の共通因子となる。 その定数が 0 でなければ、0 以外の定数と整式の共通因子は 1 なので、 共通因子は 1 となり、すなわち $f(x)$$g(x)$ は互いに素であることになる。

このようにして 2 つの整式の共通因子を求める方法が互除法である。


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竹野茂治@新潟工科大学
2006年6月2日