4 変化率での説明

最後に一つ、変化率による合成関数の微分の説明を紹介する。

$g'(a)=du/dx$$x=a$ での $g$ の変化率、すなわち $x$ の 1 の 変化に対する $u$ の変化を意味する。

例えば、ある鉄の棒を熱したとき、$x$ を熱した時間[秒]、 $u=g(x)$ をそのときの温度[度] とすると、$g(10)$ は 10 秒後の温度、 $g'(10)$ は 10 秒経過時点での、1 秒当たりの温度上昇、を意味する。 だから $g(10)=45$, $g'(10)=2.5$ であれば、10 秒後は 45 度で、 10 秒経過時点では 1 秒当たり 2.5度 (2.5度/秒) 温度が 上昇していることを意味し、 例えば 10.2 秒後は約 0.5 度上がり約 45.5度となる。

そして $y=f(u)$ を温度 $u$ のときの棒の長さ[m] とすると、 合成関数 $h(x)=f(g(x))$ は、$x$ 秒後の棒の長さとなる。 $f'(u)$ は温度 $u$ 度のときの 1 度当たりの棒の伸びを意味し、 例えば $f(45) = 5.5$, $f'(45)=0.4$ であれば、 温度 45度のときは 5.5m で、 温度 45度付近では、1 度温度が上昇すると 0.4m の割合で伸びる ことになる (0.4m/度)。

このとき、10 秒後の棒の長さは、 $h(10)=f(g(10))=f(45)=5.5$m で、 その 10 秒経過時点での棒の 1 秒当たりの伸び $L$ [m/秒] は、 1 秒当たり温度が 2.5 度上昇し、温度 1 度の上昇毎に棒は 0.4 m 伸びるので、

$\displaystyle L = 2.5\times 0.4 = 1.0\mathrm{m/秒}
$
となる。これは、$a=10$, $b=g(10)=45$ に対して
$\displaystyle h'(a) = f'(b)g'(a)
$
となること、すなわち公式 2.6 を意味する。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-10-24