4 グラフを利用する証明

逆関数のグラフ同士は、$y=x$ に関して対称という関係がある。 これを利用して、逆関数の微分をグラフを用いて考える方法もある。 今度はその方法で、例えば公式 3 から公式 4 を導いてみる。

今、 $y=f(x) = \log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$a$}}x$ とし、公式 3 を仮定した上で この関数の、$x=p$ での微分係数 $f'(p)$ を求める。 $f'(p)$ は、この関数のグラフの $\displaystyle (x,y)=(p,f(p))
=\left(p,\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$a$}}p\right)$ でのグラフの傾きであることに注意する。

図 1: $x=g(y)$ のグラフ
\includegraphics[width=6cm]{explog1-exp1.eps}
図 2: $y=f(x)$ のグラフ
\includegraphics[width=6cm]{explog1-log1.eps}
この関数のグラフの横軸と縦軸を入れ替えると、$x=g(y)=a^y$ のグラフ になる (図 1)。 先程の点は、そのグラフの $(y,x)=(f(p),p)=\left(\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$a$}}p,p)\right)$ に 対応し、 $q=\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$a$}}p$ とすると $p=a^q$ で、 $(y,x)=(q,g(q))$ となる。 その点での $x=g(y)$ のグラフの傾きは、公式 3 より、
  $\displaystyle
g'(q) = a^q\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a = p\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a$ (6)
となるが、$y=f(x)$ のグラフと $x=g(y)$ のグラフは 軸の縦と横を入れ替えたものなので、 $x=g(y)$ のグラフの $(y,x)=(q,g(q))$ での傾き $g'(q)$、 すなわち横方向の $y$ 方向に 1 進むときに縦方向の $x$ 方向に $g'(q)$ 上がる 傾きは、$y=f(x)$ のグラフの $(x,y)=(p,f(p))=(g(q),q)$ では、 横方向の $x$ 方向に $g'(q)$ 進むときに 縦方向の $y$ 方向に 1 上がる傾き $1/g'(q)$ に変わり (図 2)、 それが $f'(p)$ に等しいので、よって
$\displaystyle f'(p)=\frac{1}{g'(q)}
$
となることがわかる。よって、(6) から
$\displaystyle f'(p)=\frac{1}{g'(q)} = \frac{1}{p\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a}
$
となるので公式 4 が得られたことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-11-01