1 解答で気がついたこと

第 5 回の復習問題で出した、雪玉の問題について、 気がついたことと補足についてまとめておく。

まず、元の問題は以下の通り。

太陽の下に置いた雪玉の $t$ 分後の体積 $V(t)$、表面積 $S(t)$ に 対して、「体積減少率 (= 1 分当たりの体積減少) は表面積に比例する」を $V$, $S$ で表しなさい (比例定数は $a$ ($>0)$ とする)。

これは、時間に対する体積増加率が $V'(t)=dV/dt$ なので、 体積減少率は $-V'(t)$、よって「$-V'(t)=aS(t)$」が正解となるが、 以下のような間違いがかなりあった (しかもそれが間違いであることに 気がついていないようで丸としてある)。

$-V(t)$ は体積減少率ではなくて、体積の $(-1)$ 倍。 導関数の意味が理解できていないものと思われる。

増加率の変数が $x$ になっているのは、通常の微分が $f'(x)$ で あるからの癖か、あるいは私の手書きの正答例の $t$$x$ と 見たのかもしれない。

いずれにせよ、導関数の意味に関する問題は、 工学ではむしろ導関数の計算よりも重要かもしれないので、 こういう見方はちゃんとできてもらいたい。 例えば、以下のような日本語と式の対応も正しく把握できる必要がある。

特に、最後の 2 つの違いは区別する必要がある。 $-V'(t)$ は、丁度 $t$ 分後の時点での減少率であって、 極限によって定義される「微分係数」(導関数の値) を意味し、 「平均減少率」は極限を取らない平均的な変化率を意味する。

数学の教科書では、よく $\displaystyle \frac{f(b)-f(a)}{b-a}$ を平均変化率、 $\displaystyle \lim_{b\rightarrow a}\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(a)$ を微分係数と呼んでいるが、 それに対応する。「2 点の傾き」と「その点での接線の傾き」、 あるいは「平均速度」と「瞬間的な速度」も同様の関係にある。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-10-26