3 部分積分を利用する方法

一般の $k$ に対して $J(k)$ を求める方法として、 (高校などで) 最も普通に紹介される方法は、 部分積分を利用して漸化式を作る方法だと思われる。

$k\geq 2$ に対して部分積分を用いると、

\begin{eqnarray*}J(k)
&=&
\int\cos^k x dx
=
\int\cos^{k-1} x\cos x dx
=
...
... x)' dx
 &=&
\cos^{k-1}x\sin x-\int(\cos^{k-1} x)'\sin x dx\end{eqnarray*}


となるが、合成関数の微分により $u=\cos x$ とすれば、
$\displaystyle (\cos^{k-1} x)'$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{du^{k-1}}{dx}
=
\frac{du^{k-1}}{du} \frac{du}{dx}
=
(k-1)u^{k-2}(-\sin x)$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle -(k-1)\cos^{k-2}x\sin x$ (8)

となるから、
\begin{eqnarray*}J(k)
&=&
\cos^{k-1}x\sin x + (k-1)\int\cos^{k-2} x\sin^2 x d...
...x(1-\cos^2 x) dx
 &=&
\cos^{k-1}x\sin x + (k-1)(J(k-2)-J(k))\end{eqnarray*}


となる。よって右辺の $-(k-1)J(k)$ を左辺に移項すれば
\begin{displaymath}
kJ(k)=(k-1)J(k-2)+\cos^{k-1}x\sin x
\end{displaymath}

となるので、
\begin{displaymath}
J(k)=\frac{k-1}{k} J(k-2)+\frac{1}{k} \cos^{k-1}x\sin x\hspace{1zw}(k\geq 2)\end{displaymath} (9)

が得られる。これに、
\begin{displaymath}
J(0)=\int 1 dx=x+C,\hspace{1zw}
J(1)=\int \cos x dx = \sin x+C\end{displaymath} (10)

を組み合わせれば、帰納的にすべての $J(k)$ が得られることになる (奇数の $k$ も含めて)。

例えば、$J(4)$, $J(5)$ は以下のようになる。

$\displaystyle J(4)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{3}{4} J(2)+\frac{1}{4} \cos^3 x\sin x$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{3}{4} \left(\frac{1}{2} J(0)+\frac{1}{2} \cos x\sin x\right)
+\frac{1}{4} \cos^3 x\sin x$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{3}{8} x+\frac{3}{8}\cos x\sin x+\frac{1}{4}\cos^3 x\sin x+C,$ (11)
$\displaystyle J(5)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{4}{5} J(3)+\frac{1}{5} \cos^4 x\sin x$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{4}{5} \left(\frac{2}{3} J(1)+\frac{1}{3} \cos^2 x\sin x\right)
+\frac{1}{5} \cos^4 x\sin x$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{8}{15} \sin x+\frac{4}{15}\cos^2 x\sin x+\frac{1}{5}\cos^4 x\sin x+C$ (12)

2 節の最後に述べたように $I(0,4)$$J(4)=I(4,0)$ から求めることができる。
\begin{eqnarray*}I(0,4)
&=&
I(0,4)(x)
=
-I(4,0)(t)
=
-J(4)(t)
 &=&
-\f...
...ac{3}{8} x-\frac{3}{8}\sin x\cos x+\frac{1}{4}\sin^3 x\cos x+C_2\end{eqnarray*}


また、$I(6,4)$ なども、途中で上の $J(4)$ を使えば、
\begin{eqnarray*}I(6,4)
&=&
\int\cos^6 x\sin^4 x dx
=
\int\cos^6 x(1-\cos^2...
... -\frac{11}{80} \cos^7 x\sin x +\frac{1}{10} \cos^9 x\sin x + C\end{eqnarray*}


のように求められる。

この方法は、公式 (9) さえ作ってしまえば楽なのだが、 公式 (9) を作るために一旦一般の $k$ に対して部分積分を行わなければならない、 という点が難点ではないかと思われる。

竹野茂治@新潟工科大学
2010年3月12日