1 はじめに

大学教養科目の線形代数では、行列、ベクトル、行列式などの一般論、 特に $n$ 次元空間に関する一般論を教えるが、 逆に物理や工学などではより重要な 3 次元の 1 次変換の各論、 例えば回転変換などは普通は教えず、 「直交行列で行列式が 1 のものは回転を意味する」という話も、 それに触れることがあるかないか位だろうと思う。

私自身もちゃんと把握はしていなかったので、 あらためて直交行列と回転変換について少し考察してみたことを ここにまとめておく。

なお、本稿では、ベクトルはすべて列ベクトル

  $\displaystyle
\mbox{\boldmath$a$}=\left[\begin{array}{c}{a_1}\\ {a_2}\\ {a_3}\end{array}\right]$ (1)
のカンマ区切りの丸かっこの形で書くこととし、 横に成分を書くときは、行列の転置の記号を用いて
  $\displaystyle
\mbox{\boldmath$a$}=\,{}^T\!{(a_1,a_2,a_3)}$ (2)
の、行列とベクトルを混在したような記号で書くことにする。

また、行列も基本的に $3\times3$ の行列のみを扱うが、 行列を列ベクトルを使って

$\displaystyle A=\left[\begin{array}{ccc}{a_1}&{b_1}&{c_1}\\
{a_2}&{b_2}&{c_2}...
...array}\right]
=[\mbox{\boldmath$a$}\ \mbox{\boldmath$b$}\ \mbox{\boldmath$c$}]
$

のように書く場合、 この形だと列ベクトル同士の境が見分けにくいので、 本稿では列ベクトル表記での行列の表現では、

$\displaystyle A=[\mbox{\boldmath$a$},\mbox{\boldmath$b$},\mbox{\boldmath$c$}]
$

のようにカンマ区切りで書くことにする。

竹野茂治@新潟工科大学
2021-09-01