2 基本事項
本稿で使用する記号、必要となる事項などを紹介する。
まずは用語、記号から。
-
= 実数全体の集合,
= 複素数全体の集合
-
= 成分が実数の 行列全体の集合、
= 成分が複素数の 行列全体の集合
-
:
を (実) ベクトル空間と見て、内積
を導入したもの。
-
:
を複素数を係数とする複素ベクトル空間と見て、
複素内積
を導入したもの。
なお、複素数を係数とする複素ベクトル空間 の 複素内積
は、
複素数値をとるもので、次の 1.-4. を満たすもの。
-
-
(
)
-
(
)
-
は実数値で 0 以上。
となるのは
のときでそのときに限る。
-
では、
のとき、
と
は垂直、直交する といい、
と書く。
でも、
のとき、
と
は 垂直、
直交する といい、
と書く。
-
では
を
の 長さ、大きさ といい、
では
を
の 長さ、大きさ という。
また、長さが 1 のベクトルを単位ベクトルと言う。
-
(
) の部分集合 が、
ならば
、
,
ならば
を満たすとき、
を部分空間 という。
-
(
) のベクトル
の線形結合とは、
(
) の
形の式のこと。
が線形従属であるとは、
そのうちの一つが他のものの線形結合で表される場合。
が線形独立であるとは、
線形従属ではない場合。
- 部分空間 の次元 とは、
その中から取れる線形独立なベクトルの組
の個数 の最大値。
そのようなベクトルの組を の基底 と呼ぶ。
-
が の基底のとき、
の任意のベクトル
は、
の形に一意に表される。
-
(
) の部分空間 の基底で、
それらが互いに垂直な単位ベクトルの場合、
それを の 正規直交基底 と呼ぶ。
-
= 次単位行列 (対角成分が 1 の対角行列)、
= 零行列 (成分が全部ゼロ)
-
(
) に対し、
を の転置行列、
に対し、
を
の随伴行列 という。
-
に対し、
となる を対称行列、
となる を交代行列、
となる を直交行列と呼ぶ。
-
に対し、
となる をエルミート行列、
となる を歪エルミート行列、
となる をユニタリ行列 と呼ぶ。
- 行列
を対角化するとは、
正則行列
を取って、
が対角行列になるようにすること (常にできるとは限らない)。
-
に対して、
を
の固有多項式、
の解 を の固有値、
の固有値 に対して、
,
と
なる
を の に対する固有ベクトル と呼ぶ (必ず存在する)。
次は、本稿で必要な、容易に示される (あるいは良く知られている) 事実を
あげる。
-
(
) の次元は 。
-
が線形独立
「
となる
のは
のときのみ」
-
が
ではなく、
互いに垂直であるとき、これらは線形独立である。
-
(
) の部分空間 の次元が () のとき、
の正規直交基底
を取ることができる。
-
(
) の部分空間 の次元が () で、
(
, ) が
互いに垂直な単位ベクトルであるとき、
これらを含む の正規直交基底
を
取ることができる。
-
が
直交行列
が正規直交基底
-
が
ユニタリ行列
が
正規直交基底
-
(
) が
エルミート行列
が対称行列かつ が交代行列、
が歪エルミート行列
が交代行列かつ が対称行列。
よって、エルミート行列の成分が実数ならば対称行列、
歪エルミート行列の成分が実数ならば交代行列。
-
に対して、
、
に対して、
(右辺は行列の積として)
-
,
,
に対して
、
,
に対して
-
(
) () に対し、
、
-
に対し
- , が
で、 の列数と の行数が ,
の列数と の行数が のとき、
なお行列内の罫線は、本稿では行列内に行列 (小行列) が
成分のように並べられていることを意味するが、
列ベクトルの並びや三角行列などには罫線は使わない。
-
-
、
、
-
がユニタリ行列ならば もユニタリ行列、
が直交行列ならば も直交行列
竹野茂治@新潟工科大学
2024-03-28