2 不定形の場合のマクローリン展開
まず、関数
について考える。
これは、 では分母は 0 になってしまうが、分子もそこで 0 なので、
では 0/0 の不定形になっていて、
への極限値は 1 となることが容易にわかる。
関数論の言葉を使えば、この は の
除去可能特異点になっていて、よって、
と定義すれば、 は滑らかな関数、特に解析関数になり、
当然マクローリン展開も可能である。
そのマクローリン展開の方法を紹介する。
一般に、 の でのテイラー展開が、
のように 位 () の零点を持つ場合、
商 は 0/0 となるが、 で約分ができるため での
極限は存在し、 はこの商の除去可能特異点となる。よってこの商を
と変形し、
とすれば、 であるから、分母は
(3)
のように展開ができることになる。
この式に、(1), (2) を代入して形式的に展開すれば、
の でのテイラー展開が得られることになる。
例えば、3 次以上の項を と書くことにして 2 次の項まで
計算すれば、
のようになる。
これと同じようにすれば、 のマクローリン展開も得られ、
のようになる。
つまり、0/0 の場合は、テイラー展開レベルで約分をし、
それから商のテイラー展開の手法を利用すればいいわけである。
なお、元の質問者は、
のように展開しようとしていたようだがこれは無理で、
の近くでは は 0 に近くない (1 に近い) ため
このような展開はできない。
が利用できるのは、あくまで が 0 に近い場合 (正確には の
場合) だけである。
このように、合成関数の形でテイラー展開を行う場合には、
そういう点に注意する必要がある。
竹野茂治@新潟工科大学
2022-09-14