1 はじめに

例年、三角関数 $\sin x$, $\cos x$ の微分の公式
\begin{displaymath}
(\sin x)' = \cos x,\hspace{1zw}(\cos x)' = -\sin x\end{displaymath} (1)

の教科書の証明については説明を避けている。 それは、使っている教科書がたいてい
\begin{displaymath}
\lim_{\theta\rightarrow 0}\frac{\sin\theta}{\theta}=1
\end{displaymath}

と三角関数の和 $\rightarrow$ 積の公式を使って証明しているからで、 これは本筋からかなり離れた話になってしまう気がしているからである。

しかし、不定積分の公式を学ぶためだと思うが、どうしても $\sin x$ の 微分と $\cos x$ の微分のどちらに $-$(マイナス) をつけるのかを 間違える学生が出てくる。 少なくともこの間違いだけはなくそうと、グラフで説明したり、関数の 増加等で説明したが、どうも今一つであった。

それを、三角関数の微分がなぜそうなるかを、やや厳密性には欠けるが 少し幾何学的に説明することで改善できないかと考えたことがあり、 それを今回まとめておくことにした。

ついでに、同様に考察できる $\tan x$ の微分、 そして、定積分の

\begin{displaymath}
\int_0^{\pi/2} \sin xdx = \int_0^{\pi/2} \cos xdx = 1
\end{displaymath}

の式についても図形的な説明を試みる。

ただし、分かりやすくなっているかどうかについては 少し疑問も残る。

竹野茂治@新潟工科大学
2014年7月2日