2 自然数乗

本稿で証明する「指数法則」とは、以下の 5 つである。 $a$, $b$, $x$, $y$ に関する条件は節毎に異なるが、 まず本節では自然数乗について考える。

自然数乗、すなわち [L1]$\sim$[L5] の $x,y$ が自然数である場合、 次の条件

条件 N: $x,y$ は任意の自然数、$a,b$ は任意の実数で、 [L2] では $a\neq 0$ かつ $x>y$、 [L5] では $b\neq 0$
を満たす場合にこれらが成立することはほぼ明らかであるが、 簡単に説明する。

まず [L1] は、左辺は $a$$x$ 個の積と $y$ 個の積同士の積なので、 合計して $x+y$ 個の積となるから右辺に等しい。

[L2] は、$a\neq 0$ より $a^y\neq 0$ で、左辺は分子が $a$$y$ 個の積、 分母が $a$$x$ 個の積で、$x>y$ より $y$ 個の $a$ で約分ができ、 分母は 1、分子には $x-y$ 個の $a$ の積が残るので右辺に等しい。

なお、[L2] は、[L1] を用いて、

  $\displaystyle
a^{x-y}a^{y} = a^{(x-y)+y} = a^x$ (1)
が得られ、$a\neq 0$ より $a^{y}\neq 0$ なので、 この式の両辺を $a^{y}$ で割って得ることもできる。

[L3] は、左辺は $a^x$$y$ 個の積であり、$a^x$$a$$x$ 個の 積なので、全体で $a$$xy$ 個の積となり右辺に等しい。

[L4] は、$ab$$x$ 個の積であり、順序を入れ替えれば $a$$x$ 個、 $b$$x$ 個の積となるから右辺に等しい。

[L5] は、$\frac{a}{b}$$x$ 個の積であり、 よって分子は $a$$x$ 個、 分母は $b$$x$ 個の積となるから右辺に等しい。

なお、[L5] は、[L4] を用いて、

  $\displaystyle
\left(\frac{a}{b}\right)^xb^x=\left(\frac{a}{b}\times b\right)^x = a^x$ (2)
が得られ、$b\neq 0$ より $b^x\neq 0$ なので、 この式の両辺を $b^x$ で割って得ることもできる。

[L1] から [L2] を、[L4] から [L5] を得る方法は、 後の証明でもほぼ同じ方法で用いる。

竹野茂治@新潟工科大学
2024-06-17