2 漸化式

本稿の目的は、
$\displaystyle \mathcal{L}[f_k] = \frac{1}{(s^2+1)^{k+1}},
\hspace{1zw}\mathcal{L}[g_k] = \frac{s}{(s^2+1)^{k+1}}
\hspace{0.5zw}(k\geq 0)
$
となる $f_k(t)$, $g_k(t)$ を求めることであり、 これに対して [1] では以下のような漸化式を得た。
  $\displaystyle
\hat{f}_{k+1} = (2k+1)\hat{f}_k-t\hat{g}_k,
\hspace{1zw}\hat{g}_{k+1} = t\hat{f}_k
\hspace{1zw}(k\geq 0)$ (1)
  $\displaystyle
f_0(t) = \sin t,
\hspace{1zw}g_0(t) = \cos t$ (2)
ここで、$\hat{f}_k$, $\hat{g}_k$
  $\displaystyle
\hat{f}_k = 2^k k! f_k,
\hspace{1zw}\hat{g}_k = 2^k k! g_k
\hspace{1zw}(k\geq 0)$ (3)
である。 (1) から $\hat{f}_k$ のみ、$\hat{g}_k$ のみの 三項漸化式も得られていた:
  $\displaystyle
\hat{f}_{k+1} = (2k+1)\hat{f}_k - t^2\hat{f}_{k-1},
\hspace{1zw}\hat{g}_{k+1} = (2k-1)\hat{g}_k - t^2\hat{g}_{k-1}
\hspace{1zw}(k\geq 1)$ (4)
さらに、微分について
  $\displaystyle
\hat{f}_k' = \hat{g}_k
\hspace{1zw}(k\geq 0)$ (5)
も得られていた。 これらを元に最初のいくつかを書くと以下のようになる。
\begin{eqnarray*}\hat{f}_0(t) &=& \sin t,
\hspace{0.5zw}\hat{f}_1(t) \ =\ \sin ...
...2\cos t,
\\
\hat{g}_3(t) &=& 3t\sin t - 3t^2\cos t - t^3\sin t\end{eqnarray*}
なお、(1) より $\hat{f}_k$ がわかれば、 $\hat{g}_k$ の方は容易にわかる。

一方で [2] で考察した半奇数次ベッセル関数 (半ベッセル関数) $J_{n+1/2}(x)$ は、

  $\displaystyle
J_{n+1/2}(x) = (-1)^n\sqrt{\frac{2}{\pi x}}\,x^{n+1}
\left(\frac{1}{x}\,\frac{d}{dx}\right)^n\frac{\sin x}{x}$ (6)
と表されるが、これも最初のいくつかを見ると以下のようになる。
\begin{eqnarray*}\sqrt{\frac{\pi x}{2}}\,J_{1/2}(x) &=& \sin x,
\\
\sqrt{\fra...
...2}}\,J_{7/2}(x) &=&
\frac{(15-6x^2)\sin x+(x^3-15x)\cos x}{x^3}\end{eqnarray*}
この右辺の分子はまさに $\hat{f}_0(x)$, $\hat{f}_1(x)$, $\hat{f}_2(x)$, $\hat{f}_3(x)$ となっていて、よって
  $\displaystyle
\hat{f}_k(t) = t^k\sqrt{\frac{\pi t}{2}}\,J_{k+1/2}(t)
= t^{2k+1}\left(-\,\frac{1}{t}\,\frac{d}{dt}\right)^k\frac{\sin t}{t}$ (7)
が成り立つことが予想される。

もしこれが言えれば、それは $\hat{f}_k$ の、[1] で考察 したものとはまた別の計算法になるし、 さらに漸化式なしに 1 本の式で $\hat{f}_k$ を表せることになる。 ただし、[2] では、少し大きい次数のものに対しては 直接 (6) を使って計算したのではなく、 やはり (4) と同等の漸化式を用いて計算している から、そんなに計算しやすいわけではなかったと思う。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-07-25