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5 $2T$-周期を持つ厳密解

最後にひとつ厳密解である $2T$-周期解を紹介する.

$u(t,x)$ として進行波型の関数

\begin{displaymath}
u(t,x)
=\frac{1}{T} + a\cos\left(2\pi x - \frac{\pi}{T}t -\frac{\pi}{4}\right)\end{displaymath} (9)

を考えると

\begin{displaymath}
g(t,x) = u_t+\left(\frac{u^2}{2}\right)_x = u_t+uu_x
= \pi a^2 cos\left(4\pi x -\frac{2\pi}{T}t\right)
\end{displaymath}

によって定まる $g(t,x)$ も進行波であり, いずれも移動速度は $1/(2T)$ で, $u$, $g$$x$-方向の周期はそれぞれ 1, $1/2$, $u$, $g$$t$-方向の周期はそれぞれ $2T$, $T$ となっている. つまりこの $g$ に対して $u$ は確かに $2T$-周期解である.

この $g(t,x)$ に対して前節までの方法と同様の数値計算をしたものが Fig. 7,8 である.

図 7: $u(mT,x)$: $m$=0,1,...,30,
$L=1000$, $u(0,x)=1.0$
($T=0.5$, $\pi a^2=1.0$)
\includegraphics[width=18.5zw]{data/eps/special-c-s.eps}
図 8: $u(mT,x)$: $m$=100,101,...,130,
$L=1000$, $u(0,x)=1.0$
($T=0.5$, $\pi a^2=1.0$)
\includegraphics[width=18.5zw]{data/eps/special-c-l.eps}

ここには不連続性を持つ別の進行波型の $T$-周期解

\begin{displaymath}
u(t,x)=\frac{1}{T}+\left\{\begin{array}{ll}
\displaystyle ...
...T}t-\frac{\pi}{4}\right) &
\mbox{それ以外}
\end{array}\right.\end{displaymath} (10)

があらわれている.

初期値を, 今までのような定数ではなく, (9) の $u(t,x)$$t=0$ としたものを与えた場合の, $u(mT,x)$のグラフが Fig. 9,10 である.

図 9: $u(mT,x)$: $L=1000$,
$m$=500,501,...,530, and
$m$=2000,2001,...,2030,
u(0,x) is given by (9)
\includegraphics[width=18.5zw]{data/eps/special-2T-s.eps}
図 10: $u(mT,x)$:
$m$=2000,2001,...,2030,
$L=1000$, and $L=3000$,
u(0,x) is given by (9)
\includegraphics[width=18.5zw]{data/eps/special-2T-l.eps}

Fig. 9$L=200$ とし, $m=500$ から $m=530$ までの グラフと $m=2000$ から $m=2030$ までのグラフで, Fig. 10$L=1000$$L=3000$ の場合の $m=2000$ から $m=2030$ までのグラフである.

いずれも $m$ の増加とともに (9) からのずれが大 きくなって (10) に近づいているようにも見えるが, $L$ を増やすとそのずれは減少している. つまりこれは粘性効果によるもので, 非粘性の方程式の解の性質による ものではないと考えられる.

よって, この $2T$-周期解は, 差分近似解の差分幅パラメータ $\Delta x$ に 関しては不安定かも知れないが, 非粘性の方程式の解に関して, 必ずしも安定でないとは言えない.

また, 以上のことから漸近極限である周期解は, 初期値の平均値のみによ って一意に決定するのではないこともわかる. 気体の方程式の場合[5] には, 漸近極限の周期解が初期総質量 のみに依存していたこととは状況が異なっている. 初期値のどんな性質が漸近極限の周期解を決定しているのかを調べていく 必要がある.


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Shigeharu TAKENO
2001年 7月 20日