数学のミニ知識
はじめに
ここに、数学関係者の良く知っている常識のようなミニ知識などを
短かく紹介しておきます。
1 日 1 つ、1 行位のものをあげられたらと考えていますが、
そのうちネタが尽きてくると思います。
ただし、特に歴史的な話に関しては、内容が正しいかどうかの保証はありません。
(2020-06-17)
より詳しい話が知りたかったら、数学の啓蒙書、ネットの検索、
Wikipedia などをご覧ください。
(2020-06-19)
ミニ知識一覧
- (2020-06-17 水)
数学の集合論の分野には、
「無限個」の大きさを比較する「濃度」という概念がある。
- (2020-06-18 木)
濃度論によれば、自然数と整数、自然数と有理数の個数は同じで、
実数の個数は自然数より多い。
- (2020-06-19 金)
自然数の個数と実数の個数の間の無限個はないだろう、
という予想を連続体仮説と呼ぶ。
- (2020-06-22 月)
連続体仮説は、「成り立つことを証明することも
成り立たないことを証明することもできない」ということが証明された。
- (2020-06-23 火)
高校で習う順番とは違い、歴史的には定積分が最初にできて、
次に微分ができて、その後不定積分 (微積分学の基本定理) ができた。
- (2020-06-24 水)
定積分は紀元前のギリシャ時代からあり、
それで円の面積、球の体積や表面積、放物線と直線の間の面積などが計算されていた。
- (2020-06-25 木)
微積分学の基本定理をニュートンとライプニッツが
独立に発見し、ここから微積分学がスタートした。
- (2020-06-26 金)
ニュートンは、ペストの流行を避けてステイホームしている 2 年位の間に
「微積分学、万有引力の法則、光学」の三大業績をなしとげている。
- (2020-06-29 月)
ライプニッツは、数学以外にも、哲学、論理学など万能科学者であり、
政治家、外交官でもあった。
- (2020-06-30 火)
dy/dx や、∫f(x)dx の記号はライプニッツに由来する。
- (2020-07-01 水)
ニュートンとライプニッツは、微積分の発見の優先権を争って、
25 年間も裁判で戦った
- (2020-07-02 木)
微積分は、ライプニッツの記号が優れていたこともあり、
ニュートンのいたイギリスよりもむしろヨーロッパ大陸の方で発展していった。
- (2020-07-03 金)
3 次、4 次方程式の解の公式はある。
- (2020-07-06 月)
3 次方程式の解の公式は、ニコロ・フォンタナが 16 世紀に発見した。
- (2020-07-07 火)
16 世紀のイタリアでは数学の試合があり、
まだ解法が明らかでなかった 3 次方程式を出し合うなどのことが行われていた。
- (2020-07-08 水)
カルダノは、ニコロ・フォンタナから 3 次方程式の解の公式を聞きだし、
それを無許可に公表し、現在はカルダノの公式とも呼ばれている。
- (2020-07-09 木)
4 次方程式の解の公式は、カルダノの弟子のフェラーリが発見した。
- (2020-07-10 金)
一般の n 次方程式が、複素数の範囲で n 個の解を持つことを証明したのは、
19 世紀の 22 才のガウスであるが、解の公式を見つけたわけではない。
- (2020-07-13 月)
ガウスは、19 才のときに約 2000 年解かれていなかった
正十七角形の作図問題を解き、数学の道に進むことを決意した。
- (2020-07-14 火)
5 次方程式の、累乗根を用いた解の公式が存在しないことを 19 世紀に
ノルウェーの 22 才のアーベルが証明した。
- (2020-07-15 水)
アーベルは、楕円関数に関する業績などもあるが、
生前あまり認められず、不遇なまま肺結核で 26 才で亡くなった。
- (2020-07-16 木)
n 次方程式が累乗根で解けるための条件を発見したのは、
フランスの 20 才のガロアである。
- (2020-07-17 金)
ガロアの業績も生前は認められず、政治活動、投獄などを繰り返し、
22 才のときに決闘で亡くなった。
- (2020-07-20 月)
定規とコンパスで作図できる正 n 角形の n は、
n = 3, 4, 5, 6, 8, 10, 12, 15, 16, 17,... などで、
フェルマー素数が関係している。
- (2020-07-21 火)
正 7 角形、正 9 角形、正 11 角形などは、
定規とコンパスでは作図できないことが証明されている。
- (2020-07-22 水)
定規とコンパスでは、整数係数の 2 次方程式の解は作図できるが、
一般の整数係数の 3 次方程式の解は作図できない。
- (2020-07-23 木)
折り紙では、3 次方程式の解も作図でき、正 7 角形は折り紙ならば作図できる。
- (2020-07-24 金)
フェルマー素数とは、2m+1 (m=2k; k は自然数)
の形の素数。
- (2020-07-27 月)
フェルマー素数は、今のところ 3, 5, 17, 257, 65537 の 5
つしか見つかっていない (k=0,1,2,3,4)。
- (2020-07-28 火)
正 n 角形が定規とコンパスでは作図できる条件は、
n が、2m (m≧0) と
0 個以上の異なるフェルマー素数の積であることを、
ガウスが 24 才のときに発表した。
- (2020-07-29 水)
楕円の面積は、長軸、単軸が 2a, 2b の場合、πab となる。
- (2020-07-30 木)
楕円の周の長さは簡単な定積分で表すことができるが (楕円積分)、
その積分は簡単な関数では表すことができないことが知られている。
- (2020-07-31 金)
アーベルは楕円積分の逆関数 (=楕円関数) が、
色々な興味深い性質を持つことを発見した。
- (2020-08-03 月)
関数の変数と値の両方を、実数から複素数に拡張した、
「複素関数論」というものがある。
- (2020-08-04 火)
多項式、分数関数、底が e の指数関数、三角関数は、
容易に複素関数に拡張できる。
- (2020-08-05 水)
平方根、分数乗、底が e でない指数関数や対数関数も複素関数に拡張できるが、
多価性などがあり少し難しい。
- (2020-08-06 木)
複素関数論では、指数関数と三角関数、双曲線関数の関係が明確になり、
公式の類似性の理由が明らかになる。
- (2020-08-07 金)
実変数関数のテイラー展開の収束性は、
複素関数に拡張するとその関数の特異性と関連することがわかる。
- (2020-08-10 月)
無限級数のテイラー級数に展開できる関数を解析関数と呼ぶ。
- (2020-08-11 火)
実数値関数の範囲では、解析関数は無限回微分可能であるが、
逆に無限回微分可能でも解析関数ではない関数がある。
- (2020-08-12 水)
フーリエ級数展開では、微分可能でない、あるいは連続でない関数でも
展開可能なものがある。
- (2020-08-13 木)
すべての実数で連続であり、かつすべての実数で微分可能でない関数があり、
ワイエルシュトラスがフーリエ級数の形でそのような例を作った。
- (2020-08-14 金)
有理数で 1、無理数で 0 となる関数をディリクレ関数と呼ぶが、
これはすべての実数で不連続な関数で、当然微分可能ではない。
- (2020-08-17 月)
すべての無理数で連続でかつすべての有理数で不連続な関数はあるが、
逆にすべての有理数で連続でかつすべての無理数で不連続な関数はない。
- (2020-08-18 火)
区間 (a,b) で導関数が連続な関数を C1 級関数、
または連続微分可能と言う。
- (2020-08-19 水)
区間内のすべての x で微分可能でも
その導関数がすべての x で連続とは限らないが、
導関数は常に中間値の定理を満たし、連続点は稠密となる。
- (2020-08-20 木)
1 は素数とはしないし、通常 0 も自然数とはしないが、
0 を自然数とする流儀もある。
- (2020-08-21 金)
1900 年の国際数学者会議で、
大数学者のヒルベルトが今後解くべき問題として 23 の問題を出した。
- (2020-08-24 月)
ヒルベルトの 23 の問題は、すぐに解けたもの、まだ解けていないもの、
解く解かないといった問題ではないもの、などがある。
- (2020-08-25 火)
ヒルベルトの第 1 問題は連続体仮説である。
- (2020-08-26 水)
2000 年にクレイ数学研究所が、100万ドルの懸賞金付きの 7 つの問題、
いわゆるミレニアム問題を出した。
- (2020-08-27 木)
ヒルベルトの問題とミレニアム問題には、リーマン予想という共通な問題がある。
- (2020-08-28 金)
ミレニアム問題は、現在までのところポアンカレ予想しか解かれていない。
- (2020-08-31 月)
ポアンカレ予想は「三次元球面」に対する予想であるが、
三次元球面は「三次元空間の球面」ではなく、
「球面自体の次元が三次元」の「四次元空間内の球面」なので、
目で見ることはできない。
- (2020-09-01 火)
ポアンカレ予想は、むしろ 4 次元以上の問題が先に解かれていて、
三次元球面の問題が最後に残っていた。
- (2020-09-02 水)
ポアンカレ予想は、2002 年頃、ロシアの数学者ペレルマンによって解かれた。
- (2020-09-03 木)
2006 年の国際数学者会議は、
ペレルマンにフィールズ賞を与えることを発表したが、
彼はこれを辞退し、ミレニアム問題の賞金も辞退し、
現在は隠遁生活を送っていると言われている。
- (2020-09-04 金)
パラボラアンテナのパラボラとは放物線のことで、
パラボラアンテナは放物線の回転体である放物面の形をしている。
- (2020-09-07 月)
放物線が鏡だとすると、それに真上から光を当てると
その反射光は焦点と呼ばれる一点に集まる。
- (2020-09-08 火)
楕円には長軸上に焦点が 2 つあり、
一つの焦点から光を出すと
楕円内部で反射した光がもう一つの焦点一点に集まる。
- (2020-09-09 水)
どの方向に幅を測っても一定の幅になる図形を定幅図形、
その外周を定幅曲線、と呼ぶ。
- (2020-09-10 木)
定幅曲線は円以外にも、
ルーローの三角形、五角形、七角形と呼ばれるものなどがある。
- (2020-09-11 金)
ルーローの三角形は掃除ロボット、ロータリーエンジン、
木工の正方形ドリルなどに利用されている。
- (2020-09-14 月)
イギリスの硬貨には、円ではなくルーローの 7 角形の形をしたものがある。
- (2020-09-15 火)
現在、コンピュータでも数百桁、数千桁の数の素因数分解を
効率的に行う方法は見つかっておらず、非常に長い時間がかかる。
- (2020-09-16 水)
インターネットで広く使われている、
鍵を公開して共有する RSA 公開鍵暗号法は、
素因数分解に時間がかかることを利用している。
- (2020-09-17 木)
対数は、計算機のない 16, 17 世紀に、
積・商・累乗根などの計算を楽に行うために発明され、
天文学者の寿命を 2 倍にしたと称された。
- (2020-09-18 金)
対数が、指数関数の逆関数としてとらえられたのは、
対数の発明よりずっと後のことである。
- (2020-09-23 水)
対数の発明以前に、三角関数表と加法定理を用いて、
実数の積を和や差で行う方法が利用されていた。
- (2020-09-24 木)
重い対数表の代わりに、対数目盛をふった計算尺が 17 世紀に発明され、
電卓が普及する 1970 年代位までは、
対数尺が工業分野の計算によく用いられていた。
- (2020-09-25 金)
音の周波数と音階の関係は指数・対数の関係があり、
平均律音階では、半音ずつ上がる音の周波数は等比数列となる。
- (2020-09-28 月)
周波数が 2 倍になると音程は 1 オクターブ上の音になるので、
平均律音階の半音ずつの周波数の公比は、2 の 12 乗根である。
- (2020-09-29 火)
平均律音階では公比が無理数なため、
厳密には和音にうなりが生じ、綺麗には調和しない。
- (2020-09-30 水)
ピタゴラス音階や純正律音階は、音階の周波数が有理数なので調和しやすいが、
半音ずつが厳密には等比数列にはならないため、移調が簡単にはできない。
- (2020-10-01 木)
地震のエネルギーとマグニチュードには指数・対数の関係があり、
マグニチュードが 2 増えるとエネルギーは 1000 倍となる。
- (2020-10-02 金)
音圧と音の大きさ dB (デシベル) には指数・対数の関係があり、
音圧が 10 倍になると dB は 20 増える。
- (2020-10-05 月)
dB は dl (デシリットル) と同じで、B (ベル) という単位の 1/10 の単位。
- (2020-10-06 火)
空間内の A 地点からそれより低い B 地点までの道を作って玉をすべらせるとき、
最も早く B に到達する道を最速降下線という。
- (2020-10-07 水)
最速降下線問題は、微積分創世記にベルヌーイ (ヨハン) が提示した問題で、
ニュートンらが解いた。それは「変分法」という数学分野につながっている。
- (2020-10-08 木)
重力が真下で、空気抵抗や摩擦を考えなければ、
最速降下線は直線ではなく、
出発点では鉛直真下に向かう、上下逆のサイクロイドになる。
- (2020-10-09 金)
サイクロイドは、円を直線に沿って転がすとき、
その円周上の 1 点の軌跡の曲線。
- (2020-10-12 月)
上下逆のサイクロイドは、厳密な等時性があり、
玉をどこから転がしても、最下点に同時に到着する。
- (2020-10-13 火)
通常の振り子は、振れ幅により等時性が狂うが、
狂いがないサイクロイドを利用した、
サイクロイド振り子時計が作られたことがある。
- (2020-10-14 水)
1000km の幅の上下逆のサイクロイドの場合、まさつと空気抵抗がなければ、
端から端まで 800 秒 (= 13 分 20 秒) で到達する。
- (2020-10-15 木)
境界線を共有する国同士を別の色で塗る場合、
平面上のどんな地図でも 4 色で塗り分けられることを証明せよ、
という問題を「四色問題」という。
- (2020-10-16 金)
塗り分けるのに 4 色必要な地図は、比較的簡単に作ることができるので、
四色問題を解くことは、4 色で十分であることを証明することである。
- (2020-10-19 月)
四色問題は、1976 年にアッペルとハーケンにより、
コンピュータを用いて証明が行われ、
よって現在は「四色定理」とも呼ばれる。
- (2020-10-20 火)
平面地図ならば 5 色あれば塗り分けあれることは容易に証明されたが、
4 色で十分であることの初等的な証明は現在も見つかっていない。
- (2020-10-21 水)
地球儀のような球面上の地図も 4 色が必要かつ十分であるが、
浮き輪やドーナッツの表面のような曲面上の地図の場合は、
7 色が必要かつ十分になる。
- (2020-10-22 木)
四色問題は、数学では位相幾何学やグラフ理論という分野に属する問題で、
グラフ理論とは「関数のグラフ」とは違い、
電車の路線図のように点と点の線のつながりのみの構造を研究する学問である。
- (2020-10-23 金)
素数は無限にあることの証明は、
ギリシャ時代のユークリッドの「原論」に既に書かれている。
- (2020-10-26 月)
素数は、大きな数になるにつれ段々少なくなっていくことが知られているが、
素数の個数がどのように変化するかを調べる学問を「素数分布論」と呼ぶ。
- (2020-10-27 火)
N 以下の素数の個数 π(N) は、ln(x) を自然対数として、
大きな N に対しては N/ln(N) 位であることがわかっているが、
これを「素数定理」と呼ぶ。
- (2020-10-28 水)
素数定理は、当初リーマン予想が成り立つとの仮定の元で証明されたが、
リーマン予想を必要としない初等的な証明も
1949 年にセルバーグとエルデシュにより得られた。
- (2020-10-29 木)
すべての自然数 n に対して、n と 2n の間 (正確には n より大で 2n 以下)
に少なくとも 1 つ素数が存在する、
というベルトラン=チェビシェフの定理は、1850 年に証明された。
- (2020-10-30 金)
20 世紀になってエルデシュが高校生のときに、
ベルトラン=チェビシェフの定理のより初等的な証明を発見した。
- (2020-11-02 月)
6 = 1 + 2 + 3 のように、自分自身以外の約数を全部加えると自分自身になる数を
完全数と呼ぶ。
- (2020-11-04 水)
6 の次の完全数は、28, 496, 8128, 33550336,... などと続く。
- (2020-11-05 木)
偶数の完全数は、N = 2n-1 の形の素数 (メルセンヌ素数と呼ぶ)
によって、必ず N(N+1)/2 の形となることがオイラーによって証明された。
- (2020-11-06 金)
2n-1 が素数となるためには n が素数であることが必要だが、
n が素数でも 2n-1 が素数であるとは限らない (例えば n=11)。
- (2020-11-09 月)
メルセンヌ素数が無限に存在するかどうかはまだわかっていない。
現在わかっているメルセンヌ素数は 50 個程度である。
- (2020-11-10 火)
奇数の完全数が存在するかどうかはまだわかっていない。
- (2020-11-11 水)
2 つの数で、それぞれの自分自身を除く約数の和が他方の数になる場合、
その 2 つの数を親和数、あるいは友愛数と呼ぶ。
- (2020-11-12 木)
自分自身を除く約数の和を作り、その数に対してまた自分自身を除く約数の和を作る、
ということを有限回繰り返して元の数に戻る場合、
その数 (および途中に出る数) を社交数と呼ぶ。
- (2020-11-13 金)
微分には積、商、合成関数の微分公式があるので、
かなり複雑な関数でも、たいていは導関数の計算が行える。
- (2020-11-16 月)
逆に、不定積分には、積、商、合成関数の積分公式はないので、
かなり簡単そうな関数でも初等関数で不定積分を表すことができないものは
たくさんある。
- (2020-11-17 火)
例えば、sin x/x, cos x/x, ex/x, log x/(x+1),
sin(x2), cos(x2), eax2
などは不定積分を初等関数で表すことができない。
- (2020-11-18 水)
不定積分を求めることができない関数でも、
その特別な定積分の値は別の方法で求まることがある。
- (2020-11-19 木)
例えば、
∫0∞(sin x/x) dx = π/2
(リーマン広義積分の意味で)、
∫-∞∞e-x2dx = √π
などが知られている。
- (2020-11-20 金)
高校で習わない関数の中で有名なもの (特殊関数) として、
ガンマ関数、ベータ関数、ベッセル関数、フレネル関数、
超幾何関数、楕円関数などがある。
- (2020-11-24 火)
それらのいくつかは、初等関数で求められない積分の定積分で定義される
(例えば、ガンマ関数、ベータ関数、フレネル関数、楕円関数など)。
- (2020-11-25 水)
ガンマ関数 Γ(x) は、
Γ(x) = ∫0∞ tx-1 e-t dt
(x> 0) の、無限の範囲の定積分 (広義積分) で定義される。
- (2020-11-26 木)
ガンマ関数は階乗 n! を実数全体に拡張したような関数で、
自然数 n に対しては Γ(n) = (n-1)!、
実数 x に対して Γ(x) = (x-1)Γ(x-1) (x>1) という性質を持つ。
- (2020-11-27 金)
ベータ関数 B(p,q) は、
B(p,q) =
∫01 xp-1(1-x)q-1dx
(p> 0, q> 0) という定積分で定義される。
- (2020-11-30 月)
ベータ関数は、
B(p,q) = Γ(p)Γ(q)/Γ(p+q)
という性質を持ち、統計分野などで良く使われる。
- (2020-12-01 火)
フレネル関数 (またはフレネル積分とも言う) は、
S(x) = ∫0x sin(t2)dt、
C(x) = ∫0x cos(t2)dt
という定積分で定義される。
- (2020-12-02 水)
フレネル関数は、例えば
高速道路の出入口で使われるクロソイド曲線を表現するのに用いられている。
- (2020-12-03 木)
ベッセル関数、超幾何関数は、
微分方程式の解として、または無限級数の形として表現されることが多いが、
定積分で表現されることもある。
- (2020-12-04 金)
連立方程式は、「線形代数学」という分野では、
ベクトルや行列、行列式という道具を用いて考察する。
- (2020-12-07 月)
連立方程式にもクラメルの公式という解の公式があり、
方程式同士の足し引きをしなくても、
求めたい未知数を直接求めることができる。
- (2020-12-08 火)
クラメルの公式は、連立方程式の解を行列式を用いて表すものである。
- (2020-12-09 水)
行列式は、西洋では 17 世紀にライプニッツが 3 次のものを発見したが、
それより少し早く日本で関孝和が 3, 4, 5 次のものを発見した
(が、5 次のものには誤りがあったよう)。
- (2020-12-10 木)
一般の N 次の行列式はクラメルが定式化し、
18 世紀にクラメルの公式を完成させた。
- (2020-12-11 金)
クラメルの公式は多くの未知数 (100 個とか 1000 個とか) に対しては
計算には向かず、スーパーコンピュータでも何年もかかる場合がある。
- (2020-12-14 月)
ベクトルは、19 世紀に数学者や物理学者のハミルトン、テイト、ギブス、
ヘビサイドらによって作られ、用いられるようになっていった。
- (2020-12-15 火)
ハミルトンは、複素数の拡張として四元数を考え、
そこから 3 次元ベクトル、やスカラー、スカラー積 (内積)、
ベクトル積 (外積) などを作った。
- (2020-12-16 水)
ハミルトンの四元数は、テイトらにより物理などにも応用されたが、
四元数での表現は使いにくく、わかりにくいものだった。
- (2020-12-17 木)
ギブスやヘビサイドは、四元数計算からベクトル計算の
便利な部分だけを取り出して現在の「ベクトル」の概念を作り、
これが現在に広まった。
- (2020-12-18 金)
彼らは内積や外積を「スカラー積」や「ベクトル積」と呼んでいた。
「内積」や「外積」という名前は別のベクトル研究者のグラスマンに由来する。
- (2020-12-21 月)
グラスマンは高校の数学教師であったが、余暇で色んな学問を研究し、
サンスクリット語、色彩学、音声学などに業績を残している。
- (2020-12-22 火)
しかしグラスマンのベクトルの研究は抽象的でかなりわかりにくく、
生前あまり評価されなかった。
- (2020-12-23 水)
グラスマンがベクトルの内積を「内積」と呼んだ理由は、
垂直なベクトルの内積は 0 で、その値が正となるためには
垂直よりも一方が少し内側に入る必要があるから、と説明している。
- (2020-12-24 木)
高校では 2 次元、3 次元のベクトルのみを扱うが、
ベクトルの概念を抽象化して、
「関数」をベクトルとして扱う「関数解析学」という分野がある。
- (2020-12-25 金)
関数解析学では、例えば関数同士の積を積分したものを内積と考える。
- (2020-12-28 月)
関数解析学は、現在の微分方程式論、
フーリエ解析などの解析学の基礎となっている。
- (2020-12-29 火)
無限個の数列 a1, a2, a3, ...
または関数列 f1(x), f2(x), f3(x), ...
の和を無限級数と呼ぶ。
- (2021-01-05 火)
無限級数 S = a1 + a2 + a3 + ...
は、有限和 Sn =
a1 + a2 + ... + an
の極限 S = limn→∞ Sn として定義される。
- (2021-01-06 水)
この定義からすれば、
1 + 1/2 + 1/4 + 1/8 + ... = 2 となる。
- (2021-01-07 木)
無理数、循環小数の無限小数表示も無限級数の一種である。
- (2021-01-08 金)
1 + 1 + 1 + 1 + ... = ∞ (無限大に発散)、
1 - 1 + 1 - 1 + ... は収束しない (振動)。
- (2021-01-12 火)
有名な無限級数に、
S1 = 1 - 1/2 + 1/3 - 1/4 + ... = log 2 (自然対数),
S2 = 1 - 1/3 + 1/5 - 1/7 + ... = π/4 などがある。
- (2021-01-13 水)
1+1/22+1/32+1/42+... = π2/6
となることは、オイラーが 1735 年に解決した。
- (2021-01-14 木)
S = a1 + a2 + a3 + ...
の各項の絶対値の和
T = |a1| + |a2| + |a3| + ...
が収束する場合、S は絶対収束する、という。
- (2021-01-15 金)
絶対収束する無限級数は収束するが、
収束する級数が常に絶対収束するとは限らない。
- (2021-01-18 月)
絶対収束しないが、収束する無限級数を、条件収束する、という。
- (2021-01-19 火)
例えば、
1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + ... = ∞、
1 + 1/3 + 1/5 + 1/7 + ... = ∞ なので、
上の S1, S2 は条件収束である。
- (2021-01-20 水)
絶対収束する無限級数は、項の順番を (無限個) 入れ替えても同じ値に収束する。
すなわち、{an|n=1,2,3,...} = {bn|n=1,2,3,...}
で、かつ a_n の和が絶対収束すれば、
b_n の和も絶対収束し、両者の和は一致する。
- (2021-01-21 木)
条件収束する無限級数は、項の順番を入れ替えると異なる値に収束する。
それどころか、適当に順番を入れ替えることで、任意の値に収束するようにできる。
(∞、-∞ に発散させることも可能)
- (2021-01-22 金)
上の S1, S2 のように、
正負が交互に入れ替わる級数を交代級数と呼ぶ。
- (2021-01-25 月)
交代級数の各項 an の絶対値が単調に減少し、
0 に収束する場合、その交代級数は必ず収束するが、絶対収束するとは限らない。
- (2021-01-26 火)
無限級数の収束判定には、ダランベールの判定法、コーシーの判定法、
積分判定法などが用いられるが、一般には難しい (完全な判定法はない)。
- (2021-01-27 水)
テイラー展開、マクローリン展開など、多項式を拡張した形の無限級数
f(x) = a0 + a1(x-a)
+ a2(x-a)2 + ...
をベキ級数と呼ぶ。
- (2021-01-28 木)
各ベキ級数には、|x-a|<R ならば絶対収束し (解析関数)、
|x-a|>R ならば発散する R (0 以上の実数、または無限大)
が存在する。
この R をそのベキ級数の収束半径と呼ぶ。
- (2021-01-29 金)
収束半径は 0 以上の実数か、または無限大となるが、
収束半径が 0 は、x=a 以外ではベキ級数は発散すること、
収束半径が無限大は、すべての x で絶対収束することを意味する。
- (2021-02-01 月)
例えば 1 + x/1! + x2/2! + x3/3! + ...
の収束半径は無限大で ex に収束し、
1 + 1!x! + 2!x2 + 3!x3 + ...
の収束半径は 0 となる。
- (2021-02-02 火)
収束半径上の x (= ±R) に対する収束性は、一般には難しい。
- (2021-02-03 水)
一般二項展開
(p,0) + (p,1)x + (p,2)x2 + (p,3)x3 + ...
の収束半径は 1 で、(1+x)p に収束する。
ここで、(p,k) (k は 0 以上の整数) は一般二項係数で、
(p,k) = p(p-1)(p-2)...(p-k+1)/k! (k>0),
(p,0) = 1 とする。
- (2021-02-04 木)
一般二項展開は p が正の整数の場合の二項展開の一般化と言えるが、
これはニュートンが発見した。
- (2021-02-05 金)
ベキ級数は、収束半径内で無限回微分可能であり、その導関数は、
右辺を形式的に微分した無限級数の値に一致する (微分しても収束半径は不変)。
- (2021-02-08 月)
1 次元、2 次元のように、次元は通常整数だが、それを非整数に拡張した
「ハウスドルフ次元」と呼ばれるものがある。
- (2021-02-09 火)
1 次元は、直線や滑らかな曲線のように、
1 つの実数のパラメータと滑らかな関数で表現できる図形の次元を意味し、
同様に 2 次元は曲面、3 次元は立体の次元である。
- (2021-02-10 水)
リアス式海岸の海岸線のように、細かい折り返しが多く、
その長さが確定しない (無限大になる) ような曲線図形の場合、
そのハウスドルフ次元は 1 と 2 の間の実数値を取ることがある。
- (2021-02-12 金)
コッホ曲線やシェルピンスキーガスケットなどのフラクタル図形は、
1 と 2 の間の整数でないハウスドルフ次元を持つ典型的な例である。
- (2021-02-15 月)
すべての実数で連続で、かつすべての実数で微分可能でない関数
(ワイエルシュトラスの関数、高木関数)
のグラフも非整数次元を持つことが知られている。
- (2021-02-16 火)
2 と 3 の間の次元を持つ立体もある。
- (2021-02-17 水)
通常の集合は、要素がその集合に属する (1) か属しない (0) かが明確に決まるが、
属する度合いを 0 から 1 の実数値にした「あいまいな集合」を扱う集合論
(ファジー集合論) もある。
- (2021-02-18 木)
関数を 1 回微分した関数を 1 階導関数、
2 回微分した関数を 2 階導関数と呼ぶが、
「非整数階の導関数」(例えば 1/2 階導関数、√2 階導関数など) もある。
- (2021-02-19 金)
通常は不連続な関数は微分できないが、
不連続な関数も微分する「超関数」という理論がある。
- (2021-02-22 月)
例えば、x>0 では H(x)=1, x<0 では H(x)=0
という不連続関数 (ヘビサイド関数) の超関数での導関数は、
ディラックのデルタ関数となる。
- (2021-02-24 水)
超関数は、物理学者であるディラックによって導入され、
その数学的な理論はシュワルツによって作られ (distribution の理論)、
シュワルツはその功績によりフィールズ賞を受賞した。
- (2021-02-25 木)
超関数には、シュワルツの distribution 以外にも、
ライトヒル流の方法によるものや、
ゲルファントらによる一般化関数、
佐藤幹夫が創設した hyperfunction の理論などもある。
- (2021-02-26 金)
ある代数式を満たすような未知数を求める代数方程式と同様に、
ある恒等式を満たす関数を求める「関数方程式」という分野がある。
- (2021-03-01 月)
例えば、すべての実数 x,y に対して f(x+y)=f(x)f(y)
を満たす関数 f(x) を求めよ、という問題が関数方程式である。
- (2021-03-02 火)
上の関数方程式には、例えば f(x)=ax
(a は正の定数) という解があるが、解はそれだけとは限らない。
- (2021-03-03 水)
未知関数とその導関数 (1 階、または高階) からなる関数方程式を
「微分方程式」と呼び、
未知関数と他の関数との積分が含まれた関数方程式を
「積分方程式」と呼ぶ。
- (2021-03-08 月)
微分方程式は、力学、電気回路、化学反応の濃度変化などの自然現象を記述するが、
高速道路の渋滞、生物の増減、感染症の広がり、
戦争の戦況などを近似的に記述する微分方程式もある。
- (2021-03-09 火)
現在の天気予報も、大気の移動の微分方程式を
スーパーコンピュータで近似計算するシミュレーションで行われていて、
それにより降水確率などの定量的な評価が細かく示されるようになっている。
- (2021-03-11 木)
天体力学を研究したラプラスは、ある時点の状況がすべてわかれば、
その後の経過を永遠にすべて知ることができるだろう、と言ったらしいが、
天体力学の微分方程式でさえも実はそれほど易しいものではなかった。
- (2021-03-12 金)
太陽と地球のように 2 つの星の重力による運動は完全に解かれているが、
3 つの星同士の重力の運動、いわゆる三体問題は、
完全には積分できないことがポアンカレによって示された。
- (2021-03-15 月)
天気予報のような微分方程式も、初期値に対する敏感性 (カオス) があり、
ある時の状態をほぼ完全に把握しても、
完全な未来予測は不可能であることもわかってきている。
- (2021-03-16 火)
微分方程式には、解となる未知関数が 1 変数の場合の常微分方程式と、
2 つ以上の変数である場合の偏微分方程式がある。
- (2021-03-17 水)
微分方程式が未知関数やその導関数の 1 次式である場合、
その方程式は「線形」であるといい、そうでない方程式を「非線形」と呼ぶ。
- (2021-03-19 金)
微分方程式は、特に非線形の場合は、
解を数式や不定積分で表すこと (求積法) は一般には難しい。
- (2021-03-22 月)
数学的な微分方程式の研究の重要なテーマの一つに、
方程式の適切性 (解の存在、解の一意性、解の安定性) を示すこと、
というものがある。
- (2021-03-23 火)
線形の微分方程式では、適切性はだいぶわかっているが、
非線形の微分方程式では適切性のわかっていない方程式も多い。
- (2021-03-24 水)
2000 年に出されたミレニアム問題の中にも、
「ナビヤ=ストークス方程式」という、
流体力学に現れる非線形の偏微分方程式の適切性を示せ、
という問題が含まれている。
- (2021-03-25 木)
三角比は、紀元前に古代ギリシャの天文学者が生み出し、
天文学、地理学などに使われていった。
- (2021-03-26 金)
その三角比は、インド、アラビアを経て徐々に発展し、
今の sin, cos, tan, sec, cosec, cot などが使われるようになっていった。
- (2021-03-29 月)
10 世紀頃のアラビアでは 6 桁程度の精度の三角関数表が作られていたらしい。
- (2021-03-30 火)
ヨーロッパでは、15 世紀頃に「三角法のすべて」という本により
三角関数が広まっていき、
それがコペルニクスの天文学や、
大航海時代などにも大きな影響を与えたようである。
- (2021-03-31 水)
サイン (sine) という言葉はインドからアラビア語、
そしてそこからラテン語に直す際に誤訳されてできたものらしい。
- (2021-04-01 木)
自然数 n に対して、
sin nθ, cos nθ などを
sinθ, cosθ などの恒等式で表す式を
n 倍角の公式という。
- (2021-04-02 金)
2 倍角の公式は
sin 2θ = 2cosθsinθ,
cos 2θ = 2cos2θ - 1
= 1 - 2sin2θ
= cos2θ - sin2θ
のようになる。
- (2021-04-05 月)
3 倍角の公式は
sin 3θ = 3sinθ - 4sin3θ,
cos 3θ = 4cos3θ - 3cosθ
のようになる。
- (2021-04-06 火)
奇数倍角 cos(2m+1)θ は、
奇数次の項のみを持つある 2m+1 次多項式 f(X) によって
f(cosθ) と表すことができ、
それに対し sin(2m+1)θ は (-1)mf(sinθ) となる。
- (2021-04-07 水)
テイラー展開は、関数を無限次の多項式のような形で表すものだが、
フーリエ級数は、関数を sin nx, cos nx (n=0,1,2,3,...)
の定数倍の無限和で表すものである。
- (2021-04-08 木)
フーリエ級数と、その発展版であるフーリエ変換は、
身近なスマホやパソコンでの電波信号処理、音声処理、
画像処理などで頻繁に使われている。
- (2021-04-09 金)
曲線の長さ、図形の面積、立体の体積は、
現代数学では積分によって定義される。
- (2021-04-12 月)
円周率の定義は、円の円周と半径の比であり、
円の面積が πr2 であることは、
(1 - x2)1/2
の定積分によって得られることになる。
- (2021-04-13 火)
(1 - x2)1/2 の定積分は、
置換積分によって計算ができるが、
そのためには sin x の導関数が cos x であることが必要になる。
- (2021-04-14 水)
sin x の導関数が cos x であることを証明するには、
x → 0 のときに sin x/x → 1 となることを用いる。
- (2021-04-15 木)
x → 0 のときに sin x/x → 1 となることの
一番簡単な証明は、扇形の面積を用いるものである。
- (2021-04-16 金)
しかし、扇形の面積は円の面積が πr2
であることを利用するので、結局証明が堂々巡りになってしまう。
これを「循環論法」という。
- (2021-04-19 月)
この循環論法の解消には、
例えば sin x/x → 1 の証明を、扇形の面積ではなく、
扇形の弧の長さを利用するものに変える方法があるが、
案外簡単ではない。
- (2021-04-20 火)
他にも、sin x の定義を、
単位円を使わないものに変える (マクローリン展開や微分方程式の解による定義)
方法があるが、これだと素朴な三角関数の性質の議論が易しくない。
- (2021-04-20 火)
他にも、
円の面積を (1 - x2)1/2
の定積分によらずに求める手がある。
実際、中学校の数学では、定積分でない (が、実質的に定積分のような)
方法で説明している。
- (2021-04-21 水)
もう少し簡単な循環論法としては、ロピタルの定理と導関数の順番の話がある。
- (2021-04-22 木)
例えば、x → 0 のときに sin x/x → 1 となることは、
ロピタルの定理と (sin x)' = cos x
であることを用いて示すことができる。
- (2021-04-23 金)
しかし、(sin x)' = cos x の証明には、通常は
x → 0 のときに sin x/x → 1 となることを用いるので、
循環論法となる。
- (2021-04-26 月)
x → 0 のときに (ex - 1)/x → 1
となることも、
ロピタルの定理と (ex)' = ex
であることを用いれば示すことができる。
- (2021-04-27 火)
しかし、(ex)' = ex の証明には、通常は
x → 0 のときに (ex - 1)/x → 1
となることを用いるので循環論法となる。
- (2021-04-28 水)
なお、sin x/x → 1 や (ex - 1)/x → 1
は、それぞれ
(sin x)' = cos x や
(ex)' = ex の一部分
(x = 0 の場合) なので、
後者から前者を示すことは、ロピタルの計算例以外には、そもそも意味がない。
- (2021-04-30 金)
長さ R の線分をその内部で一回転できるような平面領域の
面積の最小値を求めよ、という問題を「掛谷の問題」という。
- (2021-05-06 木)
掛谷の問題は、日本の数学者掛谷宗一 (1886-1947) の提示した問題で (1917 年)、
線分を一回転できるような領域を掛谷集合と呼ぶ。
- (2021-05-07 金)
直径 R の円は当然掛谷集合となる。
面積は πR2/4 = 0.7854R2。
- (2021-05-10 月)
幅 R のルーローの三角形も掛谷集合で、
面積は (π - √3)R2/2 = 0.7048R2。
- (2021-05-11 火)
高さ R の正三角形も掛谷集合で、
面積は R2/√3 = 0.5774R2。
凸な掛谷集合の面積が最小なものはこれであることが証明されている (1921 年)。
- (2021-05-12 水)
凸に限らない掛谷集合の場合、面積最小なものは存在しない、
つまり、いくらでも面積の小さい掛谷集合が存在することが
ベシコヴィッチによって証明された (1928 年)。
- (2021-05-13 木)
パラドックスとは、(一見) 論理的な説明から矛盾 (らしきもの)
が導かれる話のことを言う。古くから多くのパラドックスが知られている。
- (2021-05-14 金)
一見論理的に見える推論が実は正しくないというパラドックスがあるし、
結論が経験則と矛盾しているようで実は矛盾していないというパラドックスもある。
- (2021-05-17 月)
中には、その解消が相当難しいパラドックスもある。
- (2021-05-18 火)
古代ギリシャのゼノンは、
運動に関するいくつかのパラドックスを提唱したことで有名である。
- (2021-05-19 水)
ゼノンは、目的地までの半分まで行くには、
そのまた半分まで行かなければいけないが、
そのまた半分まで、とこの繰り返しが無限に続くため、
永遠に目的地までは行けないと述べた。
- (2021-05-20 木)
ゼノンの話で最も有名なのは「アキレスと亀のパラドックス」で、
俊足で有名なアキレスが、足の遅い亀に決して追いつけない、と述べるものである。
- (2021-05-21 金)
アキレスより前に亀が歩いていると、
今亀がいる地点までアキレスが進めば、亀はその間に少し前進する。
その無限の繰り返しになるので、アキレスはいつまでも亀に追いつけない、
という話である。
- (2021-05-24 月)
ゼノンは、「飛んでる矢は止まっている」というパラドックスも提示した。
- (2021-05-25 火)
飛んでいる矢は、ある瞬間には止まっている。
つまり、速度を持たず前進しないはずである。
よって前に進むことはできないので止まっている、と述べた。
- (2021-05-26 水)
矢のパラドックスは、積分を無限小の無限和と考えると、
ある意味で同じ構造になっている。
- (2021-05-27 木)
微積分の誕生当時も、無限小の考え方は厳密ではない、
論理的ではないと批判された。
- (2021-05-28 金)
現代数学では、「無限小」の考え方は「極限」で厳密化され、
ゼノンのパラドックスも極限や無限級数などによって解消されている。
- (2021-05-31 月)
20 世紀の始めにラッセルが提示した自己言及型のパラドックスは、
数学の基礎で厳密と思われていた「集合論」をおびやかした。
- (2021-06-01 火)
ラッセルのパラドックスは、「自分自身を含まない集合」
というものを考えるもので、そういう集合全体の集合を考えると、
それは自分自身を含むとしても、含まないとしても矛盾が起きる。
- (2021-06-02 水)
自己言及のパラドックスには、「『クレタ人は嘘つきだ』とクレタ人が言った」
というものもある。
- (2021-06-03 木)
他にも、ある村に一軒だけの床屋が、
自分でヒゲをそらない人のヒゲを全部そり、そうでない人のヒゲはそらない、
この床屋のヒゲは誰がそるか、というものもある。
- (2021-06-04 金)
自己言及のパラドックスの解消は容易ではなく、
数学基礎論という厳密で矛盾のない集合論を再構築することを目指す学問が生まれた。
- (2021-06-07 月)
一見正しそうな推論、説明が間違っている簡単なパラドックスは色々ある。
- (2021-06-08 火)
例えば、1 = √1 = √(-1)×(-1) = i×i = -1
は推論が間違っているパラドックスである。
- (2021-06-09 水)
不定積分のパラドックスもある。簡単なものは、
∫(2x+2)dx = x2+2x で、一方
∫2(x+1)dx = (x+1)2 となるので、
0=1 となるというもの (積分定数がないだけ)。
- (2021-06-10 木)
∫(1/(2x))dx = (1/2)∫(1/x)dx = (1/2)log|x|+C も、
置換 (2x=t) により
∫(1/(2x))dx = (1/2)∫(1/t)dt = (1/2)log|2x|+C となり、
一見間違いがあるように見える。
- (2021-06-11 金)
地球上の全ての人に 2 人の親がいたはずで、
その親にも全て 2 人の親がいる。
よって約 50 年ほど前の祖父の世代は今の 4 倍位の人口がいたはず、
というものもある。
- (2021-06-14 月)
数学的帰納法により、すべての人は貧乏である、ということを証明するものもある。
厳密には (P)「財産が n 円の人は貧乏である」をすべての自然数
n に対して証明するもの。
- (2021-06-15 火)
(I) 財産が 0 円の人は貧乏。
(II) 財産が (n-1) 円の人が貧乏ならば、
それに 1 円足しても貧乏は変わらないから n 円の人も貧乏。
よって帰納法により (P) が証明できたことになる。
- (2021-06-16 水)
大学の理学部数学科では、数学の基礎として、まず集合論、濃度の理論、
位相空間論などを現代数学の基礎として学ぶ。
- (2021-06-17 木)
位相空間論とは、「連続関数」や「収束」などの基礎になる話で、
連続や極限を考えるために土台となる集合 (= 空間) に
「位相」という概念を入れて考える理論である。
- (2021-06-18 金)
「位相」は、空間内の部分集合全体から、「開集合」を定める、
すなわち「開集合全体」を一つ設定することで定義される。
- (2021-06-21 月)
「開集合」とは、本来は数直線の開区間のように、
端がない集合、すなわち開集合内の点は、
その近く (近傍) の点もその集合に含まれるような集合である。
- (2021-06-22 火)
現代数学の位相空間論では、むしろ「開集合全体」の集合 (開集合族)
に公理を定めていて、
その公理を満たす「開集合族」に属する集合を「開集合」
と呼ぶことにしている。
- (2021-06-23 水)
「開集合族」の公理とは、(1) 空集合と全体集合を含むこと、
(2) 開集合の任意個の和集合は開集合であること、
(3) 開集合の有限個の共通部分は開集合であること、
だけである。
- (2021-06-24 木)
よって、同じ空間でも、異なる位相を色々定めることができるし、
あまり現実的ではない (意味がない) 位相を定めることもできる。
- (2021-06-25 金)
例えば、空集合と全体集合だけからなる族も、開集合の公理を満たすので、
これによる位相が定まる (密着位相と呼ばれる)。
- (2021-06-28 月)
また、部分集合全体からなる族も開集合の公理を満たすので、
これによる位相も定まる (離散位相と呼ばれる)。
- (2021-06-29 火)
開集合の補集合を閉集合と呼ぶ。本来は閉区間のように端も含む集合であるが、
よって、閉集合族を決めることでも位相が定まる。
- (2021-06-30 水)
閉集合族の公理は、(1) 空集合と全体集合を含むこと、
(2) 閉集合の任意個の共通部分は閉集合であること、
(3) 閉集合の有限個の和集合は閉集合であること、
となる。
- (2021-07-01 木)
大学の理学部数学科では、自然数、整数、有理数、
実数なども改めて厳密に定義し直す。
- (2021-07-02 金)
特に厳密な実数論は、解析学 (微分積分) で必要となるので、
解析学の最初に実数論の定義を説明することが多い
(ただし解析学では、自然数、整数、有理数の定義は省くかも)。
- (2021-07-05 月)
自然数全体の集合 N の定義は、
ペアノの公理によって導入されることが多く、
それによって集合とその四則演算が規定される。
- (2021-07-06 火)
ペアノの公理は、自然数全体の集合を作り上げるもの、というよりは、
ある集合が自然数全体であるために満たすべき条件、という形のものである。
- (2021-07-07 水)
無の状態から N と同等の無限集合を作り上げるには、
例えば、空集合φを 1 と見て、
{φ} (1 の集合) を 2、{φ,{φ}} (1 と 2 の集合) を 3 と見る、
等を繰り返す方法がある。
- (2021-07-08 木)
これらは確実に異なる要素で、
それにより自然数と同等の要素数を持つ集合ができ、
集合論の枠組だけでペアノの公理を満たす集合を構成できることになる。
- (2021-07-09 金)
整数全体の集合 Z は、N と、
その各元に逆符号をつけた集合 (負の整数) 全体と、
0 を合わせた集合に、自然数の四則演算を拡張することで定義される。
- (2021-07-12 月)
Z も、N が定まっただけのところからスタートするので、
それを Z に膨らませるためには、直積集合や直和という考え方を用いる。
- (2021-07-13 火)
例えば Z'=N×{1,2,3} (直積集合) の元のうち、
(n,1) は n、
(n,2) は -n と同一視し、
(n,3) は (1,3) を 0 と同一視してあとは捨てることで
Z と同等の要素の集合が作れる。
- (2021-07-14 水)
現代数学では、集合 A を広い集合 B に拡張したい場合、
別に大きな集合 B' を取り、
その中に A の元と 1 対 1 に同一視するものを決めるという方法 (埋め込み)
を取ることが多い。
- (2021-07-15 木)
「超関数」の関数の拡張も、
「ファジー集合」の集合の拡張も、同様の埋め込みの方法を取っている。
- (2021-07-16 金)
有理数全体の集合 Q は、
整数の直積集合 Q'=Z×Z の元 (n,m) を n/m
と対応づけるため、m=0 の元は除き、
n'm = nm' の場合は (n,m) と (n',m') を「同じものと見る」ことで、
Q を構成する。
- (2021-07-20 火)
上の「同じものと見る」ために、
現代数学では「同値関係」と「同値類分割」というものが良く用いられる。
- (2021-07-21 水)
集合 A に対する同値関係 (〜) とは、
A の任意の 2 元 x, y
に対して「x〜y」か「x〜y でない」となる関係で、
(1) x〜x、
(2) x〜y ならば y〜x、
(3) x〜y かつ y〜z ならば x〜z、
を満たすもの。
- (2021-07-26 月)
A の部分集合 [x] を、[x] = {y∈A| x〜y}
(x を含む同値類) と定めると、
x, y∈A に対し、[x]=[y] か [x]∩[y]=φ
のいずれかとなる。
- (2021-07-27 火)
つまり、A に同値関係 〜 が定義されれば、
それによって A は同値類 [x] に分割されることになる。
この同値類の集合 {[x]| x∈A} を A/〜 と書き、
この同値関係による商集合と呼ぶ。
- (2021-07-28 水)
例えばある町の住人全員の集合 A に対して、
同じ家に住む人同士を同値 〜 とすれば、
同値類 [x] は x の家族の集合で、
商集合 A/〜はその町の住宅単位の集合になる。
- (2021-07-29 木)
Q'' = {(n,m)|n,m∈Z; m≠0} に n'm = nm' の場合に
(n,m)〜(n',m') と定義し、
商集合 Q''/〜 = {[(n,m)]| (n,m)∈Q''}
の元 [(n,m)] と n/m を同一視すれば有理数全体の集合
Q が定義できる。
- (2021-07-30 金)
例えば [(2,5)]=[(4,10)]=[(-2,-5)]=[(-4,-10)] 等であり、
これが Q のただ一つの元 2/5 を定めることになる。
- (2021-08-02 月)
Z の元 n は、Q''/〜 の元 [(n,1)]
に 1 対 1 に対応し、
それにより Z⊂Q と見られることになる。
- (2021-08-03 火)
実数全体の集合 R の定義は、もっと難しく、
デデキントの切断や、単調収束原理、コーシー列による定義など、
色々なものが知られている。
- (2021-08-04 水)
無限数列 (an) が、
n,m→∞ のときに an - am → 0
となる場合、(an) はコーシー列であるという。
- (2021-08-05 木)
通常、実数 R 内で収束する数列はコーシー列になり、
逆に R 内のコーシー列は常に収束する。
それを逆に利用して「実数」を定義する方法がある。
- (2021-08-06 金)
Q 内のコーシー列全体の集合
R' = {(an)| an∈Q} に、
同値関係 (an)〜(bn) を、
an - bn → 0 (n→∞) により定め、
その商集合を R = R'/〜 と見る。
- (2021-08-10 火)
つまり、Q でのコーシー列で、極限が同じになる (だろう)
ものを同値とみて、その同値類を、共通の極限としての実数と考える、
というやり方である (完備化)。
- (2021-08-11 水)
この場合、Q の元 x は、x,x,x,...
というコーシー列 (x) の同値類 [(x)] として
R に 1 対 1 に対応することになる (埋め込み)。
- (2021-08-12 木)
10 進展開で整数部分が m、
小数以下が .b1b2b3...
と続く「通常の」実数は、a1 = m.b1,
a2 = m.b1b2,...
という有理数のコーシー列 (an) の同値類として
すべて R に含まれることになる。
- (2021-08-20 金)
当然これらの拡張 N⊂Z⊂Q⊂R においては、それぞれの段階で、
狭い方での四則演算 (等) と矛盾しないように
広い集合での四則演算 (等) を定義する必要がある。
- (2021-08-23 月)
ノーベル賞には数学部門はないが、
国際数学者会議が与えるフィールズ賞と呼ばれる賞がある。
- (2021-08-24 火)
国際数学者会議は 4 年に 1 度開催される国際的な会議で、
国際的な研究発表、著名な数学者の講演、フィールズ賞の授賞式などが行われる。
- (2021-08-25 水)
フィールズ賞は、国際数学者会議の際に 40 才以下、
という年齢制限があるため、若くして業績を上げた数学者しか
受賞できない。
- (2021-08-26 木)
現在は、長年にわたる業績や社会的な貢献を称える、
年齢制限のないチャーン賞、ガウス賞なども
国際数学者会議に設けられている (4 年に 1 度)。
- (2021-08-27 金)
国際数学者会議とは別に、
ノルウェー政府がノルウェー出身の数学者アーベルにちなみ、
年齢制限がなく年 1 回のアーベル賞というものを与えている。
- (2021-08-30 月)
アーベル賞は年 1,2 人、フィールズ賞は現在は 4 人程度が受賞する。
- (2021-08-31 火)
日本のフィールズ賞受賞者は、これまで
小平邦彦 (1954 年)、広中平祐 (1970 年)、森重文 (1990 年) の 3 名である。
- (2021-09-01 水)
日本のアーベル賞受賞者はいないが、ガウス賞は 2006 年に伊藤清が、
チャーン賞は 2018 年に柏原正樹が受賞している。
- (2021-09-02 木)
300 年以上の懸案であったフェルマーの問題を解いたワイルズは、
直後の国際数学者会議では 45 才でフィールズ賞はもらえなかったが、
フィールズ賞特別賞 (1998) とアーベル賞 (2016) を受賞している。
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作成日: 2020-06-17
竹野茂治@新潟工科大学
(shige@iee.niit.ac.jp)