1 はじめに

何かの折に、インターネット上に
  $\displaystyle
J_n = \int_0^\infty\left(\frac{\sin x}{x}\right)^n dx$ (1)
の計算がいくつか紹介されていることに気がついた ([1],[2],[3],[4],[5] 等)。 これは広義積分で、特に $n=1$ のものは、 ルベーグ積分では積分できないが、リーマン広義積分が存在する例として 有名なもので、ディリクレ積分とも呼ばれ、 その値は $\pi/2$ になることが知られている。

$\sin x/x$ は、信号処理分野などでよく用いられるものらしく、 sinc 関数などという名前でも呼ばれている。 そのためか、意外に多くのサイトで (1) の計算が 紹介されているのに少し驚いた。

本稿では、それを少し拡張した広義積分

  $\displaystyle
I_{n,m} = \int_0^\infty\frac{\sin^n x}{x^m}\,dx$ (2)
について考察する。 この値に関する一般的な公式は [6] にも紹介されているが、 ここでは、ディリクレ積分値と部分積分、三角関数の公式などを 用いて (2) を計算する過程を紹介する。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-12-17