5 最後に

本稿では、行列の積の表現に関するいくつかのバリエーションを紹介し、 その応用例を示したが、最後はやや高度な話題である行列の対角化や スペクトル分解も簡単に紹介した。

余談ついでに補足すれば、 行列の固有ベクトルから常に $n$ 個の一次独立なものが取れるとは 限らないので、すべての行列がこのように変形できるわけではないが、 この形になる場合は、これを利用してさらに 行列の分数乗 (固有値がすべて実数で 0 以上の場合)

$\displaystyle A^{1/m} = \sum_{j=1}^{n}\lambda_j^{1/m}P_j
= \lambda_1^{1/m} P_1+\cdots+\lambda_n^{1/m} P_n
$

や、$e$ の行列乗

$\displaystyle e^A = \sum_{j=1}^{n}e^{\lambda_j}P_j
= e^{\lambda_1} P_1+\cdots+e^{\lambda_n}P_n
$

なども考えることができ、それぞれ重要な応用も知られている。 興味ある人は勉強してみるといいだろう。
竹野茂治@新潟工科大学
2021-09-10