4.1 例 1

まず、(3) の応用例を一つ紹介する。

$A$$n$ 次正方行列、$A$ による $n$ 次元数ベクトル $\mbox{\boldmath$p$}_j$ ( $j=1,2,\ldots,n$) の像が $\mbox{\boldmath$q$}_j$、すなわち

$\displaystyle A\mbox{\boldmath$p$}_j = \mbox{\boldmath$q$}_j
$

であり、 $\{\mbox{\boldmath$p$}_j;\hspace{0.5zw}j=1,2,\ldots,n\}$ が一次独立であるとき、 $A$ $\mbox{\boldmath$p$}_j$, $\mbox{\boldmath$q$}_j$ で表してみよう。

$\mbox{\boldmath$p$}_j$, $\mbox{\boldmath$q$}_j$ を並べてできる $n$ 次正方行列を それぞれ $P$, $Q$ とする:

$\displaystyle P=[\mbox{\boldmath$p$}_1\ \mbox{\boldmath$p$}_2\ \cdots\ \mbox{\b...
...=[\mbox{\boldmath$q$}_1\ \mbox{\boldmath$q$}_2\ \cdots\ \mbox{\boldmath$q$}_n]
$

このとき、(3) より

$\displaystyle AP
= A[\mbox{\boldmath$p$}_1\ \mbox{\boldmath$p$}_2\ \cdots\ \mb...
...box{\boldmath$q$}_1\ \mbox{\boldmath$q$}_2\ \cdots\ \mbox{\boldmath$q$}_n]
= Q
$

となる。 $\{\mbox{\boldmath$p$}_j\}$ が一次独立なので $P$ は正則、 すなわち逆行列を持つので、よって、$A$$A=QP^{-1}$ と書ける。 このようにして、$n$ 次元の一次変換行列 $A$ は、 $n$ 個の一次独立なベクトルとその像によって決定することができる。

竹野茂治@新潟工科大学
2021-09-10