6 指数関数

次は、[3] にもある指数関数形の断面積 $A(x)=A_0e^{2\delta x}$ ($\delta>0$) の場合を考える。 これは、断面の半径が $R_0e^{\delta x}$ の指数関数である円である 管に対応する。これも $A_0=1$ としてよい。

この場合は、

$\displaystyle g(x)=e^{-\delta x}\hat{g}(x)
$
とすると、
\begin{eqnarray*}Ag'
&=&
e^{2\delta x}(e^{-\delta x}\hat{g})'
\ =\
e^{2\de...
...{g}''-\delta^2\hat{g})
\\
-k^2Ag
&=&
-k^2e^{\delta x}\hat{g}\end{eqnarray*}
より、$\hat{g}$
  $\displaystyle
\hat{g}''=(\delta^2-k^2)\hat{g}$ (18)
を満たす。$\hat{g}$ の境界条件は、
$\displaystyle g(L) = e^{-\delta L}\hat{g}(L) = 0,
\hspace{1zw}
g'(0) = -\delta\hat{g}(0)+\hat{g}'(0) = 0
$
より、
  $\displaystyle
\hat{g}(L) = 0,\hspace{1zw}\hat{g}'(0)-\delta\hat{g}(0) = 0$ (19)
となる。

(18) の一般解は、 $k$$\delta$ の大小により解の形が分かれる。

まず、$0<k<\delta$ の場合は $\tau=\sqrt{\delta^2-k^2}$ に対して、

$\displaystyle \hat{g}(x) = C_1e^{\tau x}+C_2e^{-\tau x}
$
となるが、この場合境界条件 (19) より、
$\displaystyle \hat{g}(L) = C_1e^{\tau L}+C_2e^{-\tau L} = 0,
\hspace{1zw}
\hat{g}'(0)-\delta\hat{g}(0) = C_1(\tau-\delta)+C_2(-\tau-\delta) = 0
$
となる。$C_1$, $C_2$ の係数行列の行列式は、
\begin{eqnarray*}\left\vert\begin{array}{ll}
e^{\tau L} & e^{-\tau L}\\
-(\de...
...au L}\left(\frac{\delta-\tau}{\delta+\tau}
\,-e^{2\tau L}\right)\end{eqnarray*}
となるが、$e^{2\tau L}>1$, $(\delta-\tau)/(\delta+\tau)<1$ なので、 この行列式は負となり、よって $C_1=C_2=0$ となるので不可。

次に、$k=\delta$ の場合は $\hat{g}''(x)=0$ より $\hat{g}(x) = C_1+C_2 x$ と なり、(19) より、

$\displaystyle \hat{g}(L) = C_1+C_2L = 0,
\hspace{1zw}
\hat{g}'(0)-\delta\hat{g}(0) = C_2-\delta C_1 = 0
$
より、行列式は
$\displaystyle \left\vert\begin{array}{ll}
1 & L\\
-\delta & 1
\end{array}\right\vert
= 1+\delta L > 0
$
なので、やはり $C_1=C_2=0$ となって不可。

よって $k>\delta$ の場合のみ 0 でない解が存在する可能性がある。 この場合 $\tau=\sqrt{k^2-\delta^2}$ とすると、 (18) より

$\displaystyle \hat{g}(x) = C_1\sin\tau x + C_2\cos \tau x
= C_3\sin(\tau x + \gamma)
$
となる。境界条件 (19) より、
$\displaystyle \hat{g}(L) = C_3\sin(\tau L + \gamma) = 0,
\hspace{1zw}
\hat{g}'(0)-\delta\hat{g}(0) = C_3(\tau\cos\gamma-\delta\sin\gamma)=0
$
となるから、
$\displaystyle \tau L+\gamma = n\pi\hspace{0.5zw}(\mbox{$n$\ は整数}),
\hspace{1zw}\tan\gamma = \frac{\tau}{\delta}
$
となるが、$\gamma$ を消去すると、
$\displaystyle \frac{\tau}{\delta} = \tan(n\pi-\tau L) = -\tan\tau L
$
となるので、 $\bar{\tau}=\tau L$ ($>0$) とすると
$\displaystyle \tan\bar{\tau} = -\frac{\bar{\tau}}{\delta L}
$
となり、よって (16) より、
\begin{eqnarray*}\tau
&=&
\tau_n
\ =\
\frac{\bar{\tau}}{L}
\ =\
\frac...
...{2L}
+ \frac{1}{L}T_n\left(\frac{1}{\delta L}\right)\right\}^2}\end{eqnarray*}
となる。これにより、解 $g(x)$ は、
$\displaystyle g(x)
= C_3e^{-\delta x}\sin(\tau x + \gamma)
= C_3e^{-\delta x}\sin(\tau x -\tau L +n\pi)
$
より
  $\displaystyle
g(x)
= C_4 e^{-\delta x}\sin\tau_n(x - L)$ (20)
となるので、波長 $\lambda$ と周波数 $f_n$ は、
$\displaystyle \lambda=\lambda_n=\frac{2\pi}{\tau_n},
\hspace{1zw}f=f_n = \frac...
...{\frac{2n-1}{2}
+ \frac{1}{\pi}T_n\left(\frac{1}{\delta L}\right)\right\}^2}
$
となる。 周波数 $f_n$ の挙動を決めるのは $\delta L$ で、 $\delta L$ が大きい、すなわち管の曲がりが急な場合は $T_n(1/(\delta L))$$\pi/2$ に近くなるが、 この場合 $\delta L/\pi$ の項が無視できなくなるので、 自然倍音列は直開管に近いとも直閉管に近いともいいにくい状況になる。 逆に $\delta L$ が小さい、すなわち管の曲がりがゆるやかな場合は $T_n(1/(\delta L))$ は 0 に近く、 よって $f_n$ は直閉管に近い状況になる。

つまり、この指数関数形では、 自然倍音列を直開管に近づけるのは難しいかもしれない。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-01-11