2 グラフ

まず、質問者が述べている「グラフを描いてみると」の部分を確認する。 $\tan x$ の形式的なフーリエ級数がどうなるかについては後で紹介するとして、 (1) の右辺の部分和
\begin{displaymath}
f(x, n) = \sum_{k=1}^n 2(-1)^{k-1}\sin 2k x\end{displaymath} (2)

$\tan x$ $-\pi/2\leq x\leq \pi/2$ の範囲でのグラフを以下に示す。
図 1: $\tan x$ とフーリエ級数の $n$ 項までの和のグラフ
\includegraphics[width=0.45\textwidth ]{fourier1-1.eps} \includegraphics[width=0.45\textwidth ]{fourier1-2.eps}
(a) $n=2$ (b) $n=10$
\includegraphics[width=0.45\textwidth ]{fourier1-3.eps} \includegraphics[width=0.45\textwidth ]{fourier1-4.eps}
(c) $n=30$ (d) $n=50$
なお、これらのグラフは gnuplot で描いたものだが、最近の gnuplot は、 このような和の関数を簡単に定義できる。gnuplot version 4.4 以前では、 再帰関数として、
f(x, n) = (n>0) ? f(x, n-1) + 2*cos((n-1)*pi)*sin(2*n*x) : 0
のようにして定義でき、また gnuplot version 4.6 以降で導入された sum を使えばより自然に
f(x, n) = sum [i=1:n] 2*cos((i-1)*pi)*sin(2*i*x)
と定義できる。なお、上はいずれも $(-1)^{n-1}$$\cos(n-1)\pi$ で 代用している。

$y$ の最大値 (最小値) は、$n$ を大きくするとそれに伴いかなり大きく (小さく) なっていくのであるが、縦軸の範囲を固定して その様子を示している。

グラフを見てわかる通り、形式的フーリエ級数の部分和は、 $n$ が増えると振動が激しくなるだけで 振動の幅はあまり変わらず、$\tan x$ には普通の意味では近づいていかない。 それは、$\tan x$ が、そのフーリエ級数が普通の意味で収束 (各点収束や $L^2$ 収束) するための条件を満たさないからであるが、 この様子は元の質問者が指摘している通りである。

また、これも質問者が指摘していることであるが、 このような細かい振動の平均値のあたりに $\tan x$ のグラフがあるように 見えるが、こういう振動は普通の意味では収束しなくても、 弱収束の位相では収束する可能性があるので、 回答者の述べている通り、確かに超関数の意味では収束しているかもしれない。

竹野茂治@新潟工科大学
2015年6月1日