1 はじめに

よく、以下のような問題を目にすることがある。
地球全体にロープを 1 周させるとその長さは 4万 km ほどになる。 さらにそのロープ全体を地表から 1m の高さに持ち上げた形にするには、 ロープをどれくらい追加しないといけないか。
図 1: 地球とロープ
\includegraphics[height=0.3\textheight]{crv2-earth.eps}

地球スケールだと一見何 km もつぎ足しが必要なように感じられるが、 答えは地球の半径には無関係で、実はつぎ足しは $2\pi$ m = 6.3m ほどでよい。 これはそういう意外性を目的とした問題である。

なぜそうなるかという説明は通常、半径 $r$ の円周 $\ell$$\ell=2\pi r$ で あることを利用して、以下のように行われているように思う。

地球の半径を $R$ m とすると、最初のロープの長さ $\ell_1$$\ell_1=2\pi R$ m、それを 1m 持ちあげると半径が 1m 増えた円になるので、 その円周 $\ell_2$ $\ell_2 = 2\pi(R+1)$ m、よってその差は $\ell_2 - \ell_1 = 2\pi(R+1)-2\pi R=2\pi R + 2\pi-2\pi R=2\pi$ m となる。

これに対し、以下のような疑問を感じた。

  1. 果たしてこの説明で多くの人が納得するのであろうか。
  2. 円でない場合はどうなるだろうか。
本稿では、これらについて考察してみる。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-05-18